熱意を持って向き合いたい──ヒットを生むアニメプロデューサーが挑戦すること

数々のアニメ作品のヒットに寄与し、声優の音楽活動やキャラクターソングなど、広範にわたるコンテンツにプロデューサーとして携わる鎗水 善史。多種多様なコンテンツに関わる彼のプロデュース力は、どのように培われたのか?彼のバックボーンには、成功への道筋が開けたひとつのきっかけがありました。

アニメクリエイティヴでヒットを生み出すプロデュース業

▲アーティストなどのLIVE配信時に使用する本社3階 Streaming Studioにて

アニメクリエイティヴ本部でプロデューサー、音楽プロデューサーを務める鎗水の業務内容は多岐にわたります。企画からアニメそのものをプロデュースすることはもちろん、声優の音楽活動、アニメ作品内で使用する楽曲のプロデュースまで、プロデューサーが扱うジャンルはさまざまです。

鎗水 「プロデューサーは、クリエイター、関係各社の皆さんと共にヒット作品を生み出す仕事です。皆さんが存分にクリエイティブを発揮できるよう裏方に徹し、スケジュールや予算、クリエイター同士の意見の調整などを行います。
進行方法は作品によって異なりますが、いずれもプロジェクト全体をいい形に持っていくために、チームメンバーのアサインや方針の確認を進めます。
プロデューサーとひと言で言っても、声優さんのビジュアル面でのプロデュースを担うときもあれば、作品のディレクター的なポジションで仕事をするときもあります。とくに最近は声優アーティストの活動も増えていますから、ライブイベントのプロデュースも僕らの主要な業務のひとつです」

鎗水がアニメ部署における過去10年のキャリアで携わった作品には、「結城友奈は勇者である」など大きなヒットとなった作品も多くあります。また、声優アーティストの領域についても、継続的に関わるアーティストは、三森すずこ、内田真礼をはじめとした大人気アーティストばかり。

ヒットを重ねるために鎗水は何を心がけているのか?その答えを探っても、入社以前の過去にはありません。

鎗水 「もともとはアニメに関わる仕事を目指してポニーキャニオンに入ったわけではありませんでした。まずは任された仕事に対して最大限の努力をすることができなければ、どこで何をするにしても成果が生まれるはずはありません。
僕の場合はまったく違う興味からこの業界に入ったからこそ、そう気づけたんです」

ブラジル音楽と映画にはまった学生時代から、「好き」の延長線上の仕事へ

熊本に生まれ、東京への憧れと共に進学した東京外国語大学で、ロシア美術を専攻していた鎗水。そこで出会ったブラジル音楽と、中学生のころから好きだった映画は、彼の趣味趣向を確立していきます。

鎗水 「大学時代は今振り返っても斜に構えていましたね。中高生のころはハリウッド映画が好きだったのに、『メジャーはカッコ悪い』と多分どこかで思っていて……大学時代からはミニシアター系ばかり観ていましたし、ブラジル音楽に傾倒していきました。
僕の通った大学ではさまざまな国の文化に興味を持つ個性的な面々が集っていました。その中で過ごすことで多種多様なカルチャーに触れ、僕自身も次第に視野が広がっていったんです」

大学時代、鎗水の中でブラジル音楽への気持ちはいっそう高まり、2カ月間ブラジルへの滞在も経験しました。同じ大学の友人が海外経験を武器に商社やメーカーへの就職活動を行う中でも、好きなことを仕事にしたいという想いが強くなったと言います。

鎗水 「ただただ自分が好きなことだから、趣味をさらに掘り下げる。この感覚は今の仕事にも役立っていると思います。ポニーキャニオンにも自分の趣味にこだわりを持つ人は多いです。
広く浅くだと、結局差しさわりのないものしか生まれない。一方で、何かひとつでも深く掘り下げたことがある人は、すべてのものに対して深く入り込んでいける感覚があるように思います」

大学卒業後、鎗水は好きな映画に関わる仕事ができるポニーキャニオンへの入社を決めました。入社後3年は名古屋で営業活動を行い、その後、東京(本社)に戻って念願の映画に携わることになりました。

映画がDVD(パッケージ)になった際のマーケティングを担当し、より多くの視聴者にDVDで映画作品を届けるための戦略構築に励んだ鎗水。その延長線上の業務として異動したのが、主にアニメの周辺ビジネスを展開する「第二映像事業本部」(現アニメクリエイティヴ本部)でした。

鎗水はそれまで重ねた経験や知見を生かして仕事に臨みましたが、当時の仕事に対する姿勢は、決して望ましいものではなかったと振り返ります。

その姿勢を象徴するかのように、当時の上司に言われたひと言がありました。

「鎗水くんって、つまらないね──」

型にはめて受け身の仕事をしていた自分に、向けられた上司からのひと言

「つまらない」

鎗水がそのひと言を上司から言い渡されたのは、入社から6年目のことでした。

鎗水 「今振り返れば、当時の僕は仕事をなめていたんだと思います。それまでの 5年間で得た経験や知識を目の前の仕事にもはめこみ、狭い選択肢の中から正解を選ぼうとしていたんじゃないかと思います。
レールに例えるとわかりやすいかもしれません。自分のレールから外れると、すぐにレール上に戻そうとするのが当時の私の働き方でした。上司が伝えたかったのは、そのレールだけが答えではないということだと思います。自分のレールから外れたならば、別のレールを敷けばいいんじゃない?と」

悔しい想いをかみしめながらも、型にはまりすぎていたことに気がついた鎗水は、そのひと言をきっかけに仕事に対する姿勢を変えます。

鎗水 「なんとかしようと、もがき始めました。この業界は、プロジェクトがスタートしたころのスケジュールが途中で破綻してしまうこともしばしば。それでも、完成させるためにできることはなんだってやりました。現場のみんなと一緒になって重い撮影機材を運び、徹夜してでもなんとか完成まで持っていかなければいけません。
パズルのピースが足りないなら借りてくる。他になければピースそのものをつくってしまえばいい。そうすればパズルは絶対に完成する。熱量の高いチームの熱を落とすことなく、ゼロからイチをつくり上げることの意味を知ったように感じます」

鎗水はプロデュース業を“裏方”だと言い切ります。そして、裏方の仕事にもクリエイティビティが必要であることを悟ったのも、このときでした。

鎗水 「自分の仕事は、言ってしまえば誰でもできる仕事だと思っています。それでも、自分というフィルターを通すことで少しでも良い作品を生み出せるように、努力することが必要なんだと学びました。
『鎗水さんのおかげでなんとかなったよね』と言ってもらえるとやっぱり嬉しいですよね。頑張った甲斐があったな、ととても励みになります」

アニメを軸とした事業は、日々新しい商品やコンテンツを生み出し続けています。柔軟に挑戦する姿勢の重要性に気がつくきっかけがあったからこそ、彼の関わる作品はこれまで多くのファンに届いてきたのでしょう。

熱意を持つから何かが生まれる──好きなことをするために努力して見える世界

鎗水 「改めて自身の携わったヒット作品を振り返れば、それらの作品にはつくり手の熱意が強く感じられました。僕ももちろん、熱意を持って挑んでいます。
熱意があれば必ずしもヒットするという訳ではありませんが、ヒット作には必ず誰かしらの熱意があります。
アニメのファンの皆さんは、つくり手の熱意に対して同じ熱意を返してくださることが多いんです。熱いお客さんに作品を届けられることには、やりがいを感じます」

鎗水が手がけるプロジェクトのチームは、役割に縛られないフレキシブルな対応が求められます。お互いがフォローし合い、役職の境界を越えてより良いものを目指すスタイルは、数多くの経験の中から編み出されました。

鎗水 「アニメチームにはもともとこだわりが強く、熱量の高いメンバーが多いので、それぞれの熱をきちんと発揮できるチームづくりをみんなで意識しています。
『好きなことをして生きていく』という言葉がありますが、あれは『好きなことをするために頑張ろう』という意味だと考えています。ですから、熱量を高められない人はもがいて、熱量が高まるまで葛藤を重ねることが大切かもしれません。
好きなことをして生きている人は、そこまでの過程でめちゃくちゃ努力しているんだと思います。」

自分自身が熱量を上げる瞬間を経験し、その先にヒット作品を生み出し続けたからこそ言える言葉。アニメという領域の中で最大限努力してきた鎗水は、これからもヒットへの道筋を描き、挑戦を続けます。

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