「チャーミングケア」で病気や障がいがあっても、子どもが笑顔で生きられるように

病気や障がいのある子どもたちとその家族を応援する「マミーズアワーズプロジェクト」を立ち上げた石嶋 瑞穂。その裏側には彼女自身の小児がんの息子への想いがありました。入院期間中、「こんなものがあったらいいのに」という想いを現実にした彼女。立ち上げまでのプロセス、GPとの出会い、そして展望を語ります。

入院生活中に感じた、「こんなものがあったらいいのに」をカタチに

▲友人が息子のためにつくってくれたカテーテルケース

2016年5月より約1年間、小学2年生だった息子は抗がん剤治療を受けていました。入院期間中、抗がん剤治療に入る前に、息子はCVカテーテルを体に埋め込む手術をしたんです。CVカテーテルとは、抗がん剤を中心静脈にダイレクトに届けるための細い管のこと。

化学療法など、長きにわたり点滴治療をする子どもたちの大多数は、CVカテーテルを体に埋めこんでいます。しかし、その先端は体から突出しているので見た目が怖く感じられますし、何より管が身体の近くでぷらぷらしていたら衛生面でも問題です。

とくに小さなお子さんだと、気になって引き抜いてしまう可能性もあり大変危険です。そのため、「CVカテーテルケース」という布製のカバーで覆う場合があります。

しかし、病院から「CVカテーテルケースを用意してください」と案内されたのは手術の前日でした。市販はされておらず、そもそも息子に付き添っているので、つくろうにも材料をそろえることすらできなくて……。

途方にくれた私は友人に事情を話し、代わりに急いでつくってもらうことになりました。弟さんを白血病で亡くした経験のある友人は、「見たことがあるから大丈夫」と、なんと1日で作成してくれたんです。それはまるで売り物のようにすばらしく、親子共々大喜びでした。

友人に頼んだことを主治医の先生に話すと、「お母さんが3人くらいいればいいんですけどね……」と言われました。このとき、病気の子を持つ母親への負担が大きすぎるんだと、あらためて感じましたね。

同時に、私と同じように困っているお母さんはたくさんいるんじゃないかと思ったんです。そして、入院や療養生活にあったらいいのに……と、ものをつくる手助けができないものかと考え始めるようになり、その想いが途絶えることはありませんでした。

そこで、行動に移したのが2017年のことです。入院中の息子のベッドサイドでも始められる、ショッピングサイト『マミーズアワーズショップ』を立ち上げました。付き添い中でも簡単につくれるカテーテルのカバーの制作キットから販売を開始して、少しでも病気のお子さんを抱えるご家族の負担を軽くしてあげたい、助けてあげたいと思ったんです。

入院を理由に諦めない──“自分らしい”おしゃれを子どもたちに

▲治療中の息子さん

小児がんは生死をともなう重い病気なので、治療が最優先です。そのため、カバーからパジャマ、洋服まで、身につけているものを「おしゃれ」「かわいい」「こだわりのデザインにしたい」という感覚は、治療現場ではあまり必要とされない風潮があります。

しかし、息子が「髪の毛がなくなるの嫌やし、院内学級があるから服も毎日替えないと、汚いと思われる」と言ったんです。

その言葉に、あぁ、子どもにも外見や身だしなみのケア(アピアランスケア)は必要なのだと、あらためて感じました。同時に、これはがんの子どもに限った話ではなく、病気や障がいを持つすべての子どもに言えることなのではないか、とも思ったんです。

他の子どもたちにもヒアリングしてみると、同じような意見を持っていました。「小学生にもなってクマちゃん柄はダサい」と言う子もいれば、無償提供の“とりあえずのおかっぱ”のようなウィッグは「暑い」と言って、病院内ではかぶらない子も多くいました。

子どもは成長するし好みも変わりやすいけど、こんなときだからこそ、好きなものを身につけられるような、おしゃれをさせてあげたいと思いました。

入院当時、小学2年生だった私の息子は、自分なりのこだわりを持って「好きなものは好き、気に入らないものは気に入らない」とはっきりと伝えていました。その姿勢は病気の前と後でなんら変わりなく、“自分の個性”として子どもなりのファッションを楽しんでいたと思うんです。

大人の分野では「アピアランスケア」という考え方が浸透し始めています。アピアランスケアというのは、薬の副作用などで髪が抜けたり、切除手術で身体の一部を失ったりしたがん患者の、外見的な変化の問題を解決するための新たな支援の考え方です。

すでにいろいろな分野でのアピアランスケアがあるのですが、子どもにはまだ、そういう考えが浸透していません。障がい児や医療的ケア児などへの外見的ケアやメンタルケア・子に寄り添う保護者へのケアなどは、まだ名前すらありませんでした。

病児や障がい児のために追求する「かわいい」「かっこいい」は、おとなの「アピアランスケア」とはちょっと違うはず。だったら違う言葉をつくればいいのでは?と私は考え、子どもの可愛らしさ・子どもらしさを尊重するケアという意味を込め「チャーミングケア」と名づけました。

同じ目線で向き合う仲間──GPとの運命的な出会い

私ひとりで病室から始めたプロジェクトが、2019年現在で2年を迎え、たくさんの共感を得るようになり、サポーター・応援者さんも65団体ほどになってきました。

その中で「どんな子どもも可愛らしさを追求していい」というチャーミングケアの世界観とリンクする製品を一カ所に集めて、必要な人に必要なものを届けたいと、サービス部門を独立させ『株式会社チャーミングケアモール』を立ち上げることになりました。

ターゲットは病気や障がいを持つすべての子どもと想定すると、「小児慢性特定疾病受給者証」を持っている子どもだけでも全国に17万人いました。今まで自分ひとりでやっていたものとは全然規模感が違うので、新しいサイトは企業と組んでやりたいと考えました。

そんな中、今までやってきた活動から、東京都が行っている女性ベンチャー成長支援、「APT Women」というアクセラレーションプログラムに採択されました。しかし、グローバル!ベンチャー!という感じの起業家が多く、私のようなソーシャルな試みは少なかったこともあり、その中でマッチングする企業は見つかりませんでした。

「じゃあ自分で探そう」と考えていたときに、「アントレプレナー採用」という言葉をたまたま知り、調べてみると、一番上にゼネラルパートナーズ(以下、GP)がヒットしました。

すぐに企画書を送ったところ、GP代表取締役の進藤さんが大阪まで来てくれて。進藤さんと話したときに、他のベンチャーキャピタルの方とは違い、社会問題を解決していくという意味で同じ目線で向き合え、「やっと共通言語で話せる人に会えた!」と思って。めっちゃ嬉しかったです。

また、多数の仕事を抱えながら育児をしている私にとっては、働き方も重要でした。社団法人を立ち上げたり、起業資金を貯めるために複業としてサイト制作もしていたり、子ども3人の育児もあって……どこかに出社して、という形は難しいと思っていたので、リモートワークができるGPは私にとってベストな働き方だったんです。

病気や障がいのある子どもたちも、家族と一緒にワクワクするようなサイトに

チャーミングケアモールには、現在お声がけしているだけで、病気や障がいのある子どもさんや家族に向けたグッズを取り扱う20事業者以上の出品が決まっています。

事業の規模感も扱っているジャンルも違いますが、その多くは私と同じように自分も大変だったからという動機で事業を始められており、手づくりでサイトを立ち上げられているのが現状です。

お店でお買い物をするとき、お店の雰囲気もすごく大切だと思います。病気や障がいのある子どもたちも、家族と一緒に楽しみながら選べるサイトにしたいというのが、私の想いです。

そのためにも、まずは“チャーミングケア”という概念を広めていきたいです。たくさんの人に知ってもらって、マーケットをつくり、コラボレーションしていき、海外にも広げていきたいですね。

とくに医療者さんには知っていただきたいです。安心、安全、衛生上の問題で制限されてしまうことが多いですが、入院生活には選択肢が少なく、入院前の生活とでは落差がすごいので。

そんな中で、子どもたちが楽しくなるような選択肢を共につくっていきたいです。一回制限を取っ払って考えた上で、医療でできるのはどこなのか、というところを一緒に考えていきたいと思っています。

また、同じような病児や障がい児の親御さんたちには、「できないことはできないでいいんだよ」と伝えていきたいです。もちろん、「母親だから自分でやらなきゃ」と頑張ってしまう気持ちや、「できない」と言えない雰囲気があるのもわかります。でも、「みんな無理してるやろ!」っていつも思うんです。

現在、治療に前向きになれるようなグッズなどを取り扱うECショッピングモールをつくり、さまざまなコンテンツの配信などを計画しています。病気や障がいのある子どもたちやその家族だけでなく、社会で子どもの笑顔を支え続けるための施策をこれからも重ねていきたいです。

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