住み慣れた街で、最期まで楽しく健康に──そんな薬局の想いを、ツールで支援する

台東区蔵前のみどり薬局は、調剤はもちろん外部組織と協力して地域医療に貢献しています。代表の坂口眞弓さんと、坂口さんの娘さんで薬剤師の田中みずきさんにGooCo導入時のことや、運用の状況、薬局の取り組みについて伺いました。

蔵前地域の健康医療の担い手として

みどり薬局の歴史は古く、創業は1947年にさかのぼります。坂口さんの祖父が戦後に始めた薬局が、2019年現在まで紡がれているのです。

その当時は、蔵前のあたりは焼け野原でほとんど建物がなく、道路で人が寝泊まりするような状態だったと言います。そんな状態から始まり、坂口さんの祖父から父へと経営のバトンが渡りました。その娘として育てられた坂口さん。生活の中に薬局があったといいます。

坂口 「二代目だった父は、薬局の目の前の交差点で交通事故が起きると軟膏壺を持って出ていくような人でした。幼いころから私にとっても、薬局は生活の一部でした。大人たちが薬局で話すことを、楽しく聞いていた記憶があります」

そして坂口さんが三代目として代表となったのは1984年のこと。坂口さんは共立薬科大学薬学科を卒業の後、東京大学医学部付属病院薬剤部での勤務を経て、家業のみどり薬局を継ぎました。

しかし、それは意図したタイミングではなく、多くの苦労をしたと言います。

坂口 「突然、父が倒れて。地方で暮らしていて浅草に戻ろうと考えていたタイミングではあったものの、急に薬局を継ぐことになりました……。それまで薬剤師として病院で働いていましたが、調剤報酬や OTC薬については門外漢。そこで薬剤師会主催の勉強会や OTC薬メーカーの研修会に参加し、その時々で必要な知識を習得しながら乗り越えてきました」

そうこうしてたどり着いた企業理念は、「住み慣れた街で最期まで楽しく健康に暮らすことを応援する」こと。

この企業理念のもと、みどり薬局では、調剤業務はもちろん地域における医療健康の担い手として、さまざまな事業を展開しています。たとえば、福祉団体と協力した「車椅子ステーション」の取り組み。一時的に車いすが必要になった方に無料で貸し出しができるよう、店内に車椅子を設置しています。

その他にも行政からの依頼を受け、大人用紙おむつを近隣の高齢者宅に配布する活動も請け負っています。さらに、お店では自己穿刺による血液検査サービスを実施。薬局で簡単に健康状態をチェックできます。処方箋は小児科を中心に月400枚程度対応。店内にはキッズスペースが設けられているほか、OTC薬や日用品・雑貨の取り扱いも充実しています。

また、活躍するフィールドは薬局内にとどまらず、坂口さんは日本プライマリ・ケア連合学会理事や、浅草薬剤師会など、薬局業界や医療発展のためにも精力的に活動しているのです。

GooGoで業務省力化した分、対面業務手厚く

地域とつながり、地域と共に発展してきたみどり薬局。患者さんとの対面業務をシステム面で支えているのがGooCoです。みどり薬局が紙薬歴からGooCoへと切り替えたのは2016年のこと。その経緯を坂口さんは次のように振り返ります。

坂口 「診療報酬の KPI項目に電子薬歴が上がったのを機に導入検討を始めました。学術大会の展示ブースでいろいろな電子薬歴システムを見ていたときに GooCoを知ったんです。他の電子薬歴は生活習慣病中心で利用のフローが細かすぎたのに対し、 GooCoは小児科をカバーでき自由度が高いことから導入を決めました」

薬歴は患者カルテになると同時に、診療報酬の根拠に用いられます。ルールに則った記録・運用ができるよう、坂口さんは薬剤師仲間と情報交換を欠かしません。改定に沿ったシステムアップデートがされているかも重要なポイントです。薬剤師の田中みずきさんは、投薬後フォロー時のGooCoの見読性の高さを評価しています。

田中 「 GooCoは投薬後フォローの項目が用意され、患者さんの行動を時系列で追えます。別の薬局で使っているレセコン一体型の電子薬歴では、それができません。 GooCoは実際の業務フローに沿って応用が利くのがいいと思います」

坂口さんもハイリスク薬への対応時に、GooCoのフォローがあることが助かっていると話します。改善ポイントとしては、iPadの通信が不安定なところが気になる程度とのこと。GooCoは現場の薬剤師からも評価される、実践的かつ完成度の高いシステムなのです。

薬歴業務をGooCoで省力化する分、薬学的管理・指導など、本来の業務に注力することができます。みどり薬局は患者さんの訴えをくみ、医学・薬学的知識に基づいて医師へ情報提供するなど、患者コミュニケーションを大事にするひと手間を惜しみません。

また、坂口さんたちは「疑義照会」も必要とあれば、患者さんの目の前で行います。これは、薬剤師が処方箋をもとに調剤を行う際、処方箋の記載に疑問点や不明点を感じた場合に、処方箋の作成者に対して内容の確認を行うものです。

坂口 「疑義照会したことを患者さんに知らせる薬剤師はあまりいません。私は薬剤師がワンクッション入ることで『薬剤師が適正な医療を提供している』と実感してもらいたいので、患者さんの前で疑義照会するようにしています」

立場の異なるさまざまな人々を巻き込んで「薬局カフェ」開催!

みどり薬局の特筆すべき活動のひとつに、「薬局カフェ」というイベントの開催があります。このイベントは坂口さんの知人から、薬局で医療健康にまつわるイベントを開きたいと相談され協力したのが始まりでした。2017年から、おおよそ2カ月に1回のペースで実施しています。

イベントでは毎回、異なるテーマでゲストを招き、当事者の立場から話をしてもらいます。その後、いくつかのグループに分かれてディスカッションを行い、さらに話し合った内容を発表しシェアします。参加者は、薬剤師や薬学生、地域住民や患者さん、メディア、行政関係者まで、多様な立場の人々が集まっています。告知後すぐ定員が埋まってしまうほど人気の企画です。

坂口 「参加者のディスカッションを聞いているだけでもおもしろいです。当事者の方と話したり、病気の知識を持ったりすることで、病気やその患者さんに対する視座が変わったという感想も参加者から寄せられています」

日常生活で接点の少ない希少疾患やLGBTの当事者から、話を直接聞くことによって得られるものは少なくありません。病気やパーソナルなことについて、どう踏み込んでいくのか、どう関わっていけばいいのか、薬局カフェでの対話が薬剤師の業務の上でも有用だと坂口さんは考えます。

直近の薬局カフェは「発達障害」をテーマに行いました。ゲストスピーカーから「きょうだいと発達障害」について話してもらった後、「きょうだいの距離感」を参加者同士で話し合い、シェアしあいました。

こうして薬局カフェの内容や得られた知見は、学術発表や専門誌の連載コラムなどにまとめています。それだけでなく、当事者の生の声を行政に届ける機会にもなると、期待する声が寄せられています。

坂口 「車いすの生活をしている当事者のゲストから、会場までの道のりがバリアフリー化されておらず、通常 20分程度で行けるところを、移動に 1時間かかったという話が出ました。その回の参加者から、当事者のその生の声・実態を、行政に届けるべきだと声が上がったのです」

薬局カフェは、学びの場であると同時に、医療や健康課題解決に直結する可能性も秘めています。

創業72年。これからの時代に求められる薬局を目指して

坂口さんが代表になってからの取り組みのひとつに、グループ薬局の開局があります。旧知のドクターに開局の相談を受けたことが始まりです。事業拡大というよりは、地域の医療のためにやってきたことです。

坂口 「ひとつは 20年ほど前に近隣の薬局と協力して立ち上げました。もうひとつは透析クリニックの門前薬局です。リクエストから開局まで時間がかかりましたが、先代から若先生に切り替わるタイミングでオープンにこぎ着けました。現状の 3店舗が精一杯で、今後のグループ拡大については予定していません」

坂口さんが店を引き継いで36年。坂口さんの娘さんである田中さんは、今年新たにみどり薬局に参加しました。

田中 「病院薬剤師を辞めて今年 9月からみどり薬局で働き始めました。病院と調剤薬局では薬剤師の働き方が違います。たとえば、病院では電子カルテや看護師さんの申し伝えを通じ、患者さんの情報をあらかじめ把握してからご本人と接します。調剤薬局は限られた情報の中でヒアリングしなければなりませんが、その分、ざっくばらんに患者さんと話ができる魅力もあります」

田中さんが加わり、さらにパワフルになったみどり薬局。最後に、今後の展望についておふたりに聞いてみました。

坂口 「いまだに『薬剤師って何してるの?』と聞かれることがあるので、薬剤師が何を考えどんなことをしているのか、知ってもらわないといけないなと思っています。そのために『薬局カフェ』のような地域での情報発信や、薬局の外での活動にも取り組んでいきたいです」
田中 「みどり薬局に来てまだ 2カ月で日々のことで精一杯ではありますが。患者さんとの距離を縮められるような、時代にあった薬局を目指したいです」

世代から新たな世代へと受け継がれることで、地域の医療健康が守られています。

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