子どもを認め、見つめ、ひびき合う。その姿こそが、保育の真の価値

楽しくなければ、保育じゃない──にじいろ保育園上石神井の園長・都築洋子は、約20年の経験を持つベテラン保育士。彼女はまず自らが保育を楽しみ、周囲の保育士や保護者様をも巻き込んでいくことで、ありたい保育の姿を実現させてきました。過去の葛藤を経て見いだした保育の意義を語ります。

厳しくすることが“正しい保育”なのか? 子育てを経て変わった私の保育観

「保育士に、なろうかな?」

私がそう考え始めたのは、高校生のころ。仲のいい友人が保育士を目指していて、その影響を受けたのがきっかけでした。

今でこそ、子どもたちの成長を間近で見たり、運動会や卒園式などのイベントをみんなでつくり上げたりと、“保育”が好きで好きでたまりません。しかし始まりは本当に些細なことだったんです。だから、“なりたい”ではなく、“なろうかな”。

とはいえ、私は昔から好奇心が旺盛で、ピンときたらすぐに行動に移すタイプ。

普通に進学をするよりも、「何かを極めた方がこの先の人生が楽しくなるんじゃないかな?」という気持ちが膨らんできて、すぐに就職率100%の保育の専門学校を探し、進学を決めました。卒業後は、西東京市の保育園に就職。立ち上げから10年勤めました。

その後、結婚し、子育てとの両立を考えて退職。非常勤の保育士として、子育てをしながら細々と仕事を続けていました。

しかし、このときに自分の中で、“葛藤”が生まれることとなります。

それは、「自分が思い描く保育ができない」ということ。

私が当時お手伝いしていた保育園では、どちらかというと「厳しくしつける保育」が行われていました。時に子どものためを思い、厳しくすることも大切でしょう。保育士たちも、「子どもたちのために、きちんと教育をしなければ」という気持ちがあったのだと思います。

しかし、厳しくすればするほど子どもたちは反発し、さらに管理が厳しくなる。そんな悪循環を繰り返しているような状況でした。

私は出産を機に「厳しくすることだけが保育ではない」と感じ始めていました。自分の子どもを持ったことで、その子の成長を見守り、その時々に合った教育の仕方があるのではないか?と感じるようになったんです。

日に日にその違和感は大きくなっていきました。しかし、私は非常勤の保育士。園のやり方には意見できず、“保育士を辞める”選択をします。その後は、介護の道に進みました。

しかし、介護の仕事を始めてから9年ほどがたったころ、父親から「保育士に戻ったら?」と言われました。介護の道はやりがいがありましたが、「もう一度、子どもたちの成長を見届けたい」という想いがあったのも事実です。

そこで一念発起。自分の求める保育を追求していくためにも、現場ではなく保育士をマネジメントする立場で仕事を探したところ、ライクアカデミー(当時のサクセスアカデミー)に出会い、採用されました。2006年のことです。

熱量は自然と伝播していく。 それはまるでフラッシュモブのように

ライク入社後は、認可保育園である「にじいろ保育園」で主任や園長を任されてきました。ちょうど私が入社したころは、ライクアカデミーが都内にどんどん保育園を展開していた時期。杉並区や練馬区の園を中心に、園の立ち上げを経験してきました。

私が「にじいろ保育園上石神井」に赴任したのは、2015年のこと。赴任当初は、園側と保護者様側で意思疎通がうまくいかず、すれ違いが起きている状況だったんです。

最初は正直、どう向き合うべきか悩むこともありました。毎日、保護者の皆さまからのご指摘やご要望が寄せられている状況でしたから。

しかし、ここできちんと向き合わなければ、保護者の皆さまが抱えるわだかまりは解消されません。それならば、私が率先して向き合っていくべきだ──。

そう決意を固めた私は、とにかく皆さまの言葉に耳を傾け、解決に向けて奔走することに全力を注ぎました。たとえば、お迎えの時間には必ず顔を出して、皆さまと対話をしていくなど。

対話と問題を解決するための行動を地道に続け、行事などにも参加してもらった結果、少しずつ保護者の皆さまとの信頼関係ができ上がっていきました。「園内の雰囲気が明るくなった」「とても楽しくなった」というお声もいただけるようになったんです。

関係を築くという意味では、運動会などの行事も「保護者の皆さまと一緒につくること」を大切にしています。

以前、運動会で子どもたちへのサプライズとして、保護者の皆さまと一緒にフラッシュモブを企画した年がありました。

子どもたちにバレないように、こっそり動画を送って踊りを覚えてもらって、当日、曲がかかったら踊りながら前に出てきてもらったんです。すると、子どもたちがとても喜んでくれて、企画して良かったなと感じましたね。

こういう企画は、大抵は私が言い出しっぺ。

ですが、園の先生たちも保護者の皆さまも「おもしろそう!」と協力してくれるから、実現できるんです。

今では行事の後に、保護者の皆さまからたくさんアンケートをいただきます。「こんなことをしてみてはどうですか?」「ここは改善した方がいいかもしれません」とか。

いいアイデアは取り入れて、指摘をいただいた部分は改善していく。こうして翌年にはまったく別のものができ上がっていく──この過程がおもしろいですし、何年やっても飽きが来ないですね。

子どもを見守り、愛情をかければ、保育は絶対に楽しくなる

2019年で「にじいろ保育園上石神井」に赴任して5年目を迎えました。 日々、先生たちや子どもたちと接していて、感じることがあります。

それは、保育はとにかく“楽しむこと”が大切だということ。

やはり楽しむためには、子どもたちへの“愛情”が大切です。

では、愛情とは何なのか──。

それは、子どもの個性を認め、成長を見つめ、共感し合うことだと思います。

にじいろ保育園の保育方針である、3つの愛、「みとめ愛」「みつめ愛」「ひびき愛」がこの愛の形を表しています。

子どもを厳しく管理するのではなく、個性を尊重し、見守ることはとても難しいと思います。

多くの子どもたちをまとめていく上で、どうしても統制をとらなければいけないこともあるでしょう。保育士自身が、「子どもたちをしっかりしつけなければいけない」と思うあまり、つい厳しくしてしまうこともあると思います。

しかし、そういうときにこそ、本当の“愛情”とは何かを思い出してほしいんです。

私はかつて、「厳しくしつける保育」に対して疑問を感じていました。そんな私にとって、子どもの個性を大切にして成長を見守るにじいろ保育園の保育方針は、自分のありたい保育の形でもあります。

この3つの愛を注げれば、子どもたちも自分の可能性を信じて人生を歩めるようになるはずです。そして、子どもたちを見守る私たち自身も、素直に子どもの成長を喜べるようになる。

もしかすると、これまでのやり方を一度まっさらにしてみるのもいいかもしれません。

自分のやり方に固執するのではなく、目の前の子どもたちと向き合い、“3つの愛”を大切にしてみる。そうすることで、新たな扉が開くかもしれません。

自らの手で、人生を切り開く。子どもたちも、そして私たちも

実は今、小学校進学を控えた子どもたちに経験してもらおうと思っていることがあります。

それは、登山です。

登山をしている最中って、つらい気持ちになることもありますよね。「なんでこんな山を登っているんだろう……」と思ってしまうというか。でも、頂上に着いた瞬間の爽快感やご飯のおいしさ、目の前に広がる景色の雄大さを見ると、道中の困難を「挑戦して良かった」と思えるんです。

つらいことがあっても頑張ってやり抜けば、地上では見れない景色を見れるんですよね。その感動を子どもたちに味わってもらうことで、自信を持って何かをやり抜く経験を積んでほしいなと思っています。

この経験は、きっと保育園を卒園した後にも生きてくるはずです。

子どもたちにとって、小学校とはいわば大海原。これまで見たことのない世界が広がりますし、時には“困難”に遭遇するかもしれません。

そんなときに、重要なのが“主体性”だと考えています。自分の個性を認め、自分の頭で考え、行動を起こし、やり抜く。この力があれば、この先どんな困難があっても、自分の力で人生を切り開けると思います。

子どもたちの主体性を育てるためにも、まずは私たち保育士がお手本を見せていく。子どもは、大人の背中を見て育ちますし、生き方は伝播していくものだと思います。だからこそ、常に「どんな保育をしたいのか」という主体性を大切にしていきたいですし、何か問題があれば早期に発見し、必要であれば保護者様も巻き込んで一緒にサポートをしてく姿勢を大切にしていきたいです。

そうやって周囲を巻き込みながら、子どもたちに愛を注ぎ、個性を育んでいく。

そんな循環を、これからも生み出していきたい。そう思います。

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