踏み出す一歩の先に、お客様好みの味がある。顧客起点を実践した開発者の流儀

愛される商品を求められるシーンへ。ロングセラー商品、粉末飲料「日東紅茶ロイヤルミルクティー」の液体商品化に携わった大藪伸也は、お客様に寄り添う研究開発者。お客様のためなら専門性を超え、商品開発にチームワークを生かします。そんな仕事観は、三井農林の研究開発部門に新たな魅力を加える一歩となりました。

周りに劣るなら、足りないことをしよう。自分の価値を示す行動力のルーツ

それは商品開発に携われない3年間でした。大学院でブドウの育種、ワインの製造、分析などを研究していた大藪は、新卒採用時期に就職氷河期と直面。無事に採用を得られたのは、土産物の製造小売企業です。

開発職を希望するも、販売職に就き店頭に立つ日々。売上で好成績を残す同僚に囲まれて、大藪は自分にできることは何かと自問するようになります。

大藪 「接客上手な人はどんどん売れる。自分はあまり売れない。なら、どうやってお客様に喜んでもらおう。直接喜んでもらえない場合、何ができるだろう。そう考えたとき、接客上手な人たちがやっていないことをしたいと思ったんです」

店頭で接客が得意な人たちと同じことをするのではなく、手の足りていない部分を探して実行する。それは会社のためになり、結果お客様の喜びにつながる。大藪は同僚が手をつけない店舗管理に率先して携わり、新店舗を増やすという成果を残しました。この体験が、職場に足りないことを自分の一歩で進めるという大藪の仕事観を築きます。

成果は残せましたが、希望である開発職に就くことをあきらめきれず、文具糊メーカーと飲料メーカーに転職した際も、課題を見つけて自分から踏み出すという姿勢は変わりません。2018年8月には三井農林に入社。行動指針のひとつに「Proactive まず自分から踏み出す」を掲げる同社でも大藪はその個性を存分に発揮しています。

大藪 「入社時に上司へ、あることを聞きました。それは、三井農林でやっちゃいけないことは何かという質問です。すると、『ない』というひと言が返ってきました。じゃあ、何をやっても大丈夫だろうと思えたんです」

そんな大藪は、粉末飲料の『日東紅茶ロイヤルミルクティー』を液体飲料のボトル缶として製品化する際も、配属先に前例がない行動を取りました。それは、お客様に長く親しまれてきたロイヤルミルクティーの魅力をボトル缶にも詰める一歩になったのです。

味わいは口にして初めてわかるもの。だから、味覚を基準に研究開発を実施

大藪が取り組んだことは、『日東紅茶ロイヤルミルクティー』の開発にともなう嗜好調査の実施でした。

配属された研究所には研究者や開発技術者が約40名所属。その約40名が2チーム4ユニットに分かれて、研究や開発を行っています。みんな専門性に優れ、大藪の目から見ても優しい同僚たちでした。

魅力あふれる同僚たちがまだやっていないことは何か。考えた結果、大藪が取った行動のひとつは、「走りながら考える」こと。具体的には、嗜好調査の実施でした。

大藪 「飲料製品は、世の中にたくさんあります。だから、自分が研究することは、きっと他の誰かがもうやっている。それなら、味の特徴を知りたい。それで、配合にさまざまな工夫をほどこしながら、まず飲料をつくり、研究所の全員に飲んでもらいました。スピードを重視し、『走りながら考える』。でも、準備とビジョンは整えることに気をつけています」

研究者一人ひとりが思う存分に研究できる三井農林だからこそ、自ら客観的な嗜好調査をする研究者は少ない。そこに目をつけて、大藪は研究所のチームワークによる液体飲料の開発に取り組みました。

大藪 「ボトル缶の開発では、社内外問わずたくさんの人の協力を得ました。配合面では、粉末飲料の裏話や熱い想いを教えてもらったり、キックオフで『日東紅茶ならではの味にすること』や『社員全員のモチベーションが高まる取り組みにしたい』と聞いたので、できる限りそれを体現したいと思いました。その結果、完成したのがこのボトル缶です」

長年愛されてきた商品の新しい形を生んだのは、大藪の一歩に続くチームワークのたまもの。そして、そんなチームワークへ踏み出した一歩は、大藪自身にとっても実りある結果をもたらす行動となりました。

能力に劣るからこそ、幅広い人間になりたい。新たな知識に出会えた職場体験

大藪が得られたもの。それは、開発以外の研究に従事する同僚たちの知見でした。オリジナルの嗜好調査しか実施経験のない大藪は、日ごろから調査に長ける別部門の同僚にさまざまなアドバイスをもらいます。たとえば、研究所の全員に味覚評価を付けてもらう際の工夫がそれでした。

大藪 「嗜好調査は 5段階評価で行いましたが、その後に『 5段階にせず、それぞれの尺度で回答できる方式にした方が良いよ』と教えてもらったり、調査方式などの意見をもらったりして、嬉しかったです。やってなかったら、学べてませんし、商品開発も進んだから得しかなかったです。
そして、人の感覚を用いた製品試験をする『官能評価』の分野には学会があることも教えてもらい、勉強しに行く機会を得られました」

大藪は、自分にはできないこと、苦手なことがあるという強い自覚を持っています。劣等感にもつながりそうなその気持ちは、大藪の職場全体を見て不足している部分を進んで補うという仕事観、さらには自己研さんへの意識につながります。

大藪 「 30歳を迎えるころ子どもに恵まれ、子育てをすることで自分を客観視することができるようになりました。人を認めることができるようになりました。
それまでは、優秀な同僚へ嫉妬する気持ちもありましたが、自分自身の成長に集中できるようになったんです。いろんなことを知っているほうが、幅の広い人間になれるかなと思って。人生で数冊だったのが年間 100冊を超えるほど、読書もよくするようになりました。
こんな自分になれたのは、趣味の影響も大きいです。約 20年続けてきたフットサルを通じて、自分が目立つことよりも、チームに貢献する働きを見せた方が良い結果を残せることにも気づくことができました」

仕事と趣味、相容れないふたつの事象をどちらも自身の成長につなぐことができるのは大藪の魅力です。異なる事象に橋を架けて行動につなぐことができる人間だからこそ、研究開発職という専門領域を超えて、他領域の同僚ともチームワークを築くことができました。

そして、それが新たな成長機会をもたらしてくれることを知った大藪は、三井農林で2年目を迎えた2019年9月、周囲に成長機会を分け与えることのできる存在にもなっています。

一歩踏み出す成長の先で、お客様の笑顔とつながる喜びへ

大藪が周囲に分け与える成長機会は、三井農林には社員の一歩を後押しする社風があることを行動で示した結果、生まれたものでした。大藪は自身で最初の一歩を踏み出す姿を見せ、それが周囲に変化をもたらしているのです。

大藪 「若手や慎重な社員の場合、やりたいことがあってもやっていいのかどうかわからない場合があると思うんです。そんな人たちが、ぼくの 一歩を見て自分から踏み出してくれるようになりました。きっと、こんなやり方でもいいのだなと思ってくれたはずで、とても嬉しい」

お客様と同じく、飲料の味わいを求めて。まずは開発をし、そして研究につなげる。ひとり、またひとりと、走りながら考える社員が増えています。大藪自身も走りながら考えることに終わりはありません。すでに次の飲料を題材に開発や研究を進めています。

大藪 「開発チームの一員として、既存品の開発をスピーディーに仕上げ、新技術や新たな付加価値を残すことに力を入れています。所属するユニットで取り組むテーマについて、数年計画の開発研究をしています。
三井農林がおもしろいのは、新しいことに挑戦できる環境が整っているところ。研究所ですが、高度な分析機器もあります。それを使って、新しいことに挑戦できる。ライフワークとして研究に取り組めるのは、とても魅力です」

足りないものを補うことは、新しいものを生み出すことと変わりない。自分にできないことを自覚して、大藪が踏み出した一歩は、いつしか周囲が持ち合わせない個性という魅力に変わりました。この先も大藪は、同僚とのチームワークを追い風にして、一歩、もう一歩と新たな道を進みます。

その道の先で、さまざまな部署と交わり、互いの専門性をブレンドした、三井農林オリジナルの仕事が築かれることを夢見て。それはきっと、これからもお客様の笑顔に出会う、喜びの在りかになるから。

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