離婚と再婚、子育てを経たから寄り添える──「探偵社をカウンセリングで変える」奮闘

探偵業界に認定カウンセラー制度を導入する──今となっては珍しくないシステムの誕生と発展には、岡田 真弓代表ともうひとり、当時MRに入社したばかりの星 直子の存在がありました。決して一筋縄ではいかなかった奮闘の軌跡を追っていきます。

離婚を経て探偵社の調査員へ

▲相談部・星 直子

アルバイトをしながらごくごく平穏な生活を送っていた星。そんな彼女に大きな転機が訪れる。夫の不倫が原因で離婚を決意したのだ。

星 「いろいろなことがありましたけど、離婚して慰謝料をもらいました。そのとき 27、 8歳のころ。子どもはいませんでした。そこから仕事をしなきゃと思って。それまでちゃんと会社に入って働いた経験はありませんでした。
職安に行ったらその中に MR探偵社を見つけて。こんな職業あるんだって興味を持ったことが始まりですね。最初はこの探偵社に応募してとりあえず面接や履歴書を書く練習をしてみよう、そんなふうにしか思っていませんでした(笑)」

職安を通して連絡してみると、さっそく「今から来てください」と返事があった。

星 「今からっ!? て思いましたけど、とりあえず行きました。そしたらとあるビルの一室に強面な男性がいて。当時は少し怖かったです(笑)。そこに岡田 真弓社長がいらっしゃって。面接に来たは良いものの、ふたりとも『どうしようか? 採用しても続くかな?』みたいな感じでした。
そんな中で私が『こないだ離婚しました。慰謝料も取れたんです』と伝えたら『結構やるじゃん!』みたいになりまして。そのひと言でとりあえず採用してみようとなったそうですね。私もとりあえずやってみるか、という気持ちでした」

こうしてさっそくMRに入社した星だったが、調査員としての仕事は苦しいものだった。

星 「当時は真弓社長と元のご主人がふたりで MRの営業をやっていて、今でいう相談部(カウンセラーたちが在籍する部署)はなかったんですよ。働いているのも男性の調査員が 5、 6人いただけ。ですから入社当初は紅一点の調査員として働きました。
始めたは良いんですけど、体力的にものすごくきつかったです。主に不倫調査で尾行とか張り込みをしていたんですけど、 2時間くらいかけて田舎の方の雪が降っている、田んぼしかないところまで不倫相手の方を追いかけて行って、実家を判明させて……その後ポツンと、どうやって帰ろう……とか(笑)。もうキツイなって思って」

調査部が向いていないと痛感した星は、長い目で考えたときに、営業職の方が継続して働けるのでは?と考えるように。そして社長に相談部で働かせてほしいと頼んだ。

相談部にマニュアルができるまで

▲現在では当たり前のようにあるマニュアルだが……

希望通り相談部として働けることになった星だが、当時マニュアルはなく、独学でカウンセリングを習得することになった。

星 「社長たちは自分で考えてこなせていけるから、人に教えるという感覚があまりなかったのだと思います。こっちは教えられてもいないのにできるわけないじゃん!となるわけですけど、やはり自分で考えてやり方を学んでいくしかなかったんです。
最初のころは、お客様が来たらお茶出しをして奥に引っ込んでました。そこで社長たちのトークをメモしながらずっと聞いて。何日もそれをやった後に今度は社長の隣で、一緒にお客様の話を聞くようになって、話が終わったら内容のフィードバックを社長としました」

星と社長は毎日一緒にいる時間が長く、それは同時に大切な勉強時間であったと振り返る。

星 「社長はビルの廊下や車の中とか、場所を問わず電話対応をされていて。当時はフリーダイヤルも携帯電話で受けていた時代だったんです。隣でそれをずっと聞いて、トークのコツだったり、切り返し方だったり、どういうふうに言えばお客様に安心してもらえるか、常に聞いて学びましたね。
大変だったのは社長も同じで、その電話対応をずっと私が聞いているものですから、失敗できないという意識を常に持っていたそうです」

相談部で意識するべきは「トーク力」だけではない。「見た目」にも気を配る必要があった。

星 「私は見た目が幼く見えたので、社長と一緒にデパートに行って少しでも大人に見えるように良いスーツやバッグ、靴を選んでそろえました。一式そろえられたのは、慰謝料をたくさん取れたからなんですけど(笑)。
自分がどういうふうに見られているのか、自分の外見とかしゃべり方を客観的に見て、お客様に安心感を与えて信頼していただくためには何が足りないのか、どういったところを補填すれば良いのか、そういうことを第一に考えることが必要なのだと学びました。
お客様に合わせて幼く見えないようなメガネを掛けたり、普段声が高いので、あえて低いトーンで話したりとか、業務の中で試してそれらを社長たちとマニュアル化していったんです。これは相談部の人数が少なくて、毎日社長たちと一緒にいたからこそできたのだと思います」

まさに今のMRの礎がつくり上げられていった時代。そうしてある程度のマニュアルができたところで、自社の拡大を図るため、2019年現在のビルに本社を構えた。

MRの拡大期──班長としての苦悩

▲社員たちの集合写真

求人でやってきた新人にカウンセリングを教えることが星の役目になった。これまで経験こそ積んできていたが、それを人に伝えることの難しさを痛感することになる。

星 「最初のうちはやっぱり、教えることが難しかったですね。入ってくる人がみんな私より年上で。 こっちは全然上から言ったつもりではないんだけど、怒らせてしまったりだとか、トイレ掃除お願いしますと言ったら、トイレ掃除とかはできない! と次の日に辞めちゃったりとか。
あとはやっぱり、当時は私の他に電話を取れる人がいないから、私自身がバタバタしてその人をフォローできないことも大変でしたね。でも、乗り越えるためのコツはなかったです。
そんな中でひとり、定着してくれた人がいて。そこで初めて自分に余裕ができました。いろいろとその人に聞かれたことを教えているうちに、あぁ、なるほどっていうふうに、教え方がわかってきたんですね」

また、星の苦労を社長がフォローした面もあった。

星 「社長が私を、最初のカウンセラーだと明確にしてくれたから、私自身の立場が成り立っていました。ただの生意気な年下の娘と見られていたら、私もどうなっていたかわかりません。私がやりやすい環境だったからこそ、教えることができましたし、おかげで人も徐々に増えていきました」

人が増えていくと同時に、組織のおもしろさを発見する。

星 「人が新しく入ってくるじゃないですか。直属の上司は新人に対して必ずマイナスなことを言う。新人も上の人たちに対して何か思う部分もある。
ここで、上の人も下の人も、お互いに受け入れることができていれば、大きな摩擦は起きないんです。でも、それがやっぱり難しいんだなっていうことはずーっと思ってます。そしてこれがまた難しいんですけど、『なんでもいいよ』『大丈夫だよ』って放任するのは、それはそれで下が育たない。
逆に、ある程度厳しくすると辞めていってしまう。バランスがやっぱり大事で、それはどこの会社も同じだと思います。会社組織の永遠の課題なんだろうな、と」

星自身は、相談部の班長としてルールを設け、それを実践し続けた。

星 「いつも班員に言っていたのが、自分が何を求められているのか、自分の役割がなんなのか、考えてやりましょうということですね。私自身の役割はというと、お客様の受注数が社内においてトップクラスであること。
それは実現することができました。他には、自分の班員を辞めさせないこと、班内でのトラブルを起こさないようにする、マイナスを言わせないようにする、という感じでやっていましたね」

とにかく必死で働き続けた星だが、そこまで働いたのには理由があった。

星 「以前離婚したときにね、元夫が『不倫相手の女性はとても仕事ができる』って言ったことにすごく腹が立ったんですよね。私はそれまでちゃんと勤めたことがないし、その部分が自分の中でどうしても引っかかっていて。
早く給料を稼ぎたい、早く何かをできるようになりたい、そんな気持ちが私を仕事に駆り立てたんです。とにかくできることは全部やりました」

そんな星には大きな達成感と、次のステップは何か?という問いが残ることになった。

再婚と子育て、カウンセラーとしての成長

▲電話対応中の星直子
星 「会社が全盛期を経て、少し落ち着いたときに、自分のこの先について考えました。年齢を考えて、出産のリミットが近くなってきたこともあるから、どうしようかなと思い始めて。
仕事しているときは結婚のこととか、全然考えてなかったんですけどね。それで、相手を探そうと。そして良い巡り合わせがあって、結婚したんです」

それでも出産までには遠い道のりがあったと語る。

星 「私、結婚してから妊娠するまでが大変で、不妊治療もしていました。その影響で会社を休んだこともありました。周囲にはあまり言ってなかったですけど、仕事に対して一線を引いたんです。今までバリバリ働いてきたのにペースダウンしたので、不満に思う人も多かったと思います。
でも、会社は、誰が売り上げたって良いと思っていて。実際、そのときはすでに人もたくさんいましたし、後輩もカウンセラーとして立派に育っていました。そんな中、子どもができたのは本当に幸運でした」

初めての出産・育児という経験を経て、カウンセラーとしても変化が訪れる。

星 「やっぱり自分が経験していないことって、共感しにくいじゃないですか。思考の幅も広がらないんですよね。人から話を聞いて、あぁなるほどなって思って。以前は、出産の経験がないわけだから、他の相談員から話を聞いたり、お客さんから話を聞いたりして、それをもとにカウンセリングしていました。
でも、今はお子さんの年齢で必要なものがわかりますし、子どものために離婚はできないという方の気持ちも、ものすごくわかりますね。そういう意味では出産以前・以後ではまったく違います」

カウンセラーとして成長した星であるからこそ、言える言葉がある。

星 「今までのクライアントに『会わなかったら死んでた』とか、『電話しなかったらどうなっていたかわからない』と泣いて感謝されることがあったんです。そうしたことが自信になっていますし、一番のやりがいですね。
普通の会社では離婚したとか、不倫されたとか、転職を考えたときに年齢とか、そういう要素って不利に働く場合が多いじゃないですか。 MRは逆にそういった人生経験がきっと誰かの役に立つんだという考え方をしているんです。自分のつらかった人生を反映させることができる、本当に不思議でおもしろい仕事だと思います。
たとえ経験が少なくても、周りのカウンセラーやお客様と一緒に成長し合って学んでいけるので、これから入社される方にはそういった気持ちを持って来てほしいと思っています」

時代に合わせて常に進化していくMR。

そこには過去の経験を生かしてクライアントに寄り添う、心強いカウンセラーの姿があった。

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