感覚で評価されがちなデザインで、ロジカルな共通言語の確立を目指すウェブデザイナー

デジタル技術の進化やトレンドなどによって、目まぐるしい変遷をたどってきたウェブデザイン。さまざまなプロジェクトを経験してきたウェブデザイナー・金成奎は、いまだセンスやフィーリングでとらえられ、体系化されていないウェブデザインに一石を投じました。質を高めるために立ち上がった金の活躍をご紹介します。

インターネット業界トップクラスの企業で、デザインに取り組みたい

▲バンド活動・アルバイトに明け暮れていたころの金

2012年にネットイヤーグループ株式会社に入社し、ウェブデザイナー/アートディレクターとして、多くの大規模プロジェクトのビジュアルデザイン・アートディレクションを手がけてきた金成奎(きん・せいけい)。

今では、ネットイヤーグループのビジュアルデザインチームに属するトップデザイナーですが、実は、就活も就職もせず、バンド活動や飲食のアルバイトに明け暮れていた時期がある元モラトリアム。20代後半となり、数社のウェブマーケティング企業を渡り歩いてウェブディレクションやデザインを担当したことが、金の意識を変えていきます。

金 「学生時代から絵を描くことが好きだったので、その流れでなんとなくウェブデザインに興味を持ったのですが、デザインってウェブ上の “設計 ”であり、ただの絵づくりだけじゃない深さや難しさがあることを徐々に実感するようになりました。
また、ビジュアルデザインは、ウェブサイトやアプリケーションの一番外側にあり、良くも悪くもユーザーが抱く印象に大きな影響を与えます。だからこそデザインっておもしろい、もっと突き詰めたいと思いました」

ウェブやインターネットの業界でトップクラスの企業に入社し、さまざまなクライアントのビジネスに貢献したい。そう決心した金が強く入社を希望したのがネットイヤーグループです。

金 「さまざまな事例を見て、ネットイヤーグループが世界的な企業のウェブサイトのコンサルティングや制作を担当していることを知りました。メディアに登場する社員も多く、『ネットイヤーグループはイケてる人が多い』という噂が耳に入ってきたことも。ほかにも数社から内定をもらっていたのですが、ネットイヤーグループの合否が出るまで待ってもらいました」

プロフェッショナル集団の一員に。入社3カ月目に参加したコンペで見事受注

▲入社当時の金(左から2番目)

念願かなって入社したネットイヤーグループで金を待っていたのは、プロフェッショナル集団に囲まれた刺激的な日々でした。

金 「デジタルやインターネットに精通していて、クライアントのビジネスを深く理解しているから、提案書や制作物のクオリティが高い。フローやオペレーションがルール化していて、ミスが起こらないよう対策も万全。プロフェッショナルな PM、AD、IAと仕事をしているのだと毎日実感しました」

入社3カ月目には、自ら希望して大規模リニューアルのコンペのメンバーに、デザイナーとして参加。受注できたことが大きな自信となります。こうしたコンペなどの提案案件だけでなく、日々のウェブサイトの運用でも経験を積みました。

金 「某レストランチェーンのウェブサイトの運用プロジェクトは印象に残っています。次から次へと新商品が発売になるので、その度にキャンペーンサイトを制作するのですが、ちょっとしたミスが莫大な損失につながることも。なぜ、フローやオペレーションがルール化されているのか、そのときに重要性を痛感しました」

言語化・体系化することで、ウェブデザインの認識を共有できる

▲2019年現在の金と『ウェブデザインの思考法』

社内での存在感も増し、「デザインはぜひ金さんに」と、社内のプロデューサーやクライアントから指名を受けることも。でも徐々に、金の胸中には大きな疑問が湧いてきました。

金 「ウェブデザインやアートディレクションの評価って、感覚的かつ属人的になりやすいですよね。デザイナー自身に言語化のスキルが足りなかったり、評価する側がデザインに詳しくないのでフィードバックが曖昧だったりなど、そこにはいろんな理由があります。明確な手法や手段がないから、プロジェクト全体が目指しているものを見失ってしまう。デザイン方針の合意や進め方について、関係者みんなが納得して進められるオペレーションはないか、研究するようになりました」

そこで金が目指したのが“ウェブデザインの言語化・体系化”を進め、制作に関わるステークホルダー間でデザインの「共通言語」を確立すること。装飾性ならシンプルかデコラティブか、成熟度なら若々しいか伝統的か……といった二極のインジケーターを設け、どちらに偏るかで、クライアントやプロジェクトメンバーでデザインの認識を共有します。

金が参加したプロジェクトでは、この方法でデザイン認識を進めることが標準に。クライアントからは「デザインの意図がわかりやすくなった」「こちらの希望をよりくみ取ってくれるようになった」と、さらなる信頼を得られるようになりました。

このノウハウを社内だけでなく、デザインに関わるすべてのステークホルダーに伝えたい。そう考えた金は、この理論についての書籍化を思い立ち、出版社に企画書を持ち込みます。ウェブデザイナーとしての業務をしながら、帰宅後や週末に執筆に勤しんだ金の努力は、『ウェブデザインの思考法』(マイナビ出版刊)という書籍になり、2019年5月に出版されました。

自身の考え方やノウハウを惜しげなく伝えて、若手デザイナーを育成したい

▲デザイナーチームの勉強会

『ウェブデザインの思考法』に書かれているのは、“ウェブデザインの言語化・体系化”についてだけではありません。ウェブデザインの定義や、文字・色・形などのデザイン要素が与える影響などについても詳しく説明しています。

金 「自身の考え方やノウハウを惜しげなく伝えることで、ウェブデザインについて長く読まれる一冊をつくりたい。そう思って執筆しました」

出版以来、社内外で高評価を得ている『ウェブデザインの思考法』。今後もデザイナーとして、経験を積みたいのはもちろんですが、金が今最も興味を持っているのが若手デザイナーの育成です。週数回、デザイナーチームが集まる勉強会を開催し、若手にさまざまな課題を与えています。

金 「結局みんなつまづくところは似ているので、自分なりに得たノウハウやメソッドは、広く公開・共有して参考にしてもらいたいです。自分ができるようになったことは、他のデザイナーもできるようになってくれれば嬉しいです。いずれは、社内だけでなく、専門学校や大学で教えられるようになりたいですね」

デザインについての自分の考えを一冊の本にまとめたことで、言葉にして、次の世代に伝えることの大切さを実感したという金。その目は、自社だけでなく、ウェブ業界、インターネット業界全体の未来を見つめています。

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2019年7月25日に開催した『ウェブデザインの思考法』出版記念セミナーのレポートもぜひご覧ください。
https://www.netyear.net/idea/20190725i.html

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