一人ひとりの価値観がストーリーと制度に──OKANが挑む“幸せ”のキッカケづくり

2012年に創業した株式会社OKAN。「働く人のライフスタイルを豊かにする」をミッション・ステートメントに、事業を通じて「働きたい人が働き続けられる社会の実現」を目指しています。当社の人事領域担当で二児の母でもある手塚ちひろが、新しい人事制度「ワーク・ライフ・バリューストーリー」をご紹介します。

働きたい人が働き続けられる社会の実現を目指すものの……

▲OKANで人事領域を担当する手塚ちひろ

人事制度「ワーク・ライフ・バリューストーリー(以下WLVS)」の推進を担当したメンバーのひとり、ヒューマンサクセスグループの手塚ちひろ。OKANのミッションに共感し、日々「働きたい人が働き続けられる世界に」という強い想いを持って業務に取り組んでいます。

前職在職中に2度の出産を経験した彼女。当時は、営業職として土日祝日や深夜でもクライアント対応をこなしていましたが、1度目の産休明けに、育児と仕事のバランスをとるため新卒採用や労務関係の部署へと異動を願い出ます。

しかし、2度目の産休明けに、ふたりの子どもが相次いで感染症に罹患。異動できたにも関わらず、出社が厳しい状況が続いてしまいました。

手塚 「異動して間もないということもあり、効率よく業務をこなせず周囲に迷惑をかけがち。それに加え、ふたり分の看病で休みも多くなってしまい、少し会社に対して負い目を感じていました。
そんなとき、何気ない会話の中で聞いた同僚からの『子どもってそんなに熱が出るんですね』という言葉。相手にとってはまったく悪気のないひと言だったと思うのですが、負い目を感じている分、悲しみを抱いてしまったんです」

仕事や会社そのものへ消極的な感情を抱いたわけではなかった。でも、自分の中で苦しんでしまったことから、なぜそのような感情が生まれてしまったのかと考えていたところ、OKANに出会います。

手塚 「 OKANといえば、食生活が乱れがちなオフィスワーカーに、体に良い食事を手軽にとってもらうためのぷち社食を提供している会社、というイメージでした。
でも、『働く人のライフスタイルを豊かにする』というミッションや『働きたい人が働き続けられるような世の中を目指している』ことを知り、ここで働きたいと強く思い、応募することにしました」

OKANが2019年現在提供しているのは、「オフィスおかん」と「ハイジ」のふたつのサービス。

とくに、健康的な惣菜を冷蔵庫にストックしておき、好きなときに1食ずつ購入できる、法人向けのぷち社食サービス「オフィスおかん」は、導入企業が2000社を超えていることもあり、「OKANは食の会社」という印象を持たれることも少なくありません。

手塚 「働き続けられない理由になっている “ハイジーンファクター ”を分析し、組織を改善するサービス『ハイジ』も、健康的な食事を手軽にできるようにした『オフィスおかん』も、働き続けることを実現させるためのサービスなんです。
でも、そのサービスを通じてかなえたい想いの部分がなかなか伝わらなかったんですよね。私自身の経験からも、望まない離職を防ぎ、働きたい人が働き続けられる社会の実現に役立つ制度をつくりたいという想いから生まれたのが『ワーク・ライフ・バリュー・ストーリー』だったんです」

そもそもOKANの考え方には「ワーク・ライフ・バリュー(以下WLV)」があります。これは、日本全体に「働き方を見直そう」「ワーク・ライフ・バランスを正そう」という共通認識が定着してきている今だからこそ、これから重要なのはバランスを整えた上で何を優先するかという視点。その優先度を決めるのが「WLV」=仕事と生活に関わる個人の価値観です。

そして、そのWLVを体現した制度、それが「ワーク・ライフ・バリューストーリー」なのです。

社員一人ひとりが大切にしている価値観を知れば、人も会社も変われる

▲実際のWLVS

わたしたちのミッションは、「働く人のライフスタイルを豊かにする」ことです。

ライフスタイルは「働くこと」も包含していることから、「働きたい」と考える人のライフスタイルを豊かにするには、働き続けられる“環境”を提供することが必要だと考えています。

しかし、前述のように、相互の理解不足からちょっとしたすれ違いで悩み、離職してしまうという結果がいくつも生まれているのが現実です。

「WLVS」は、そのような課題を解決するのにも役立つ制度として誕生しました。

手塚 「 OKANには 52人が在籍していますが、52人いれば、価値観も 52通り。社員一人ひとりが『大切なこと』を実現するには、時間や資金が必要になります。そこで、社員に『大切なこと』と『なぜそれを大切だと思っているか』を紙 1枚にストーリーで表現してもらい、それを社内に共有します。
そして、そのストーリーで大切なこと、つまり価値観を主題とした「 ○○手当」や「 ○○休暇」をとってもらうものです。取得できるのは、年 1日の休暇、または年に 1度支払われる 1万 5000円の手当。たとえば、『子どもには能動的に意思決定をするようにしてほしいから、子どもとの 1on1の時間をつくる休暇』として『子ども 1on1休暇』を取得する、といった具合です。
そして制度の数だけオリジナルの “ストーリー ”が生まれることから、『ワーク・ライフ・バリュー・ストーリー』と命名されているんです」

家族のいるメンバーでは、家族関連のことを大切にしている人が多く、「家族会議休暇」「夫婦で会話休暇」などのストーリーが生まれました。

また、休暇だけではありません。非日常体験から生活にハリを感じるメンバーは、「WOW!手当」、社内メンバーと業務外でコミュニケーションをとることが大切だと感じているメンバーは「メンバー仲良し旅行手当」を。しばらく実家に帰っていなかった若い社員では、父親と会話するための「親父と話そう休暇」がストーリーとして共有されています。

手塚 「年次有給休暇との違いを尋ねられることもありますが、有休では取得理由を伝える必要がないのに対し、WLVSでは宣言したことのために休暇をとる、という違いがあるんです。そして、年次有給休暇とは別枠として設けられているところも異なります」

この制度が目指すのは、時間や手当で社員が豊かになることではありません。社員が大切にしている価値観を共有することで、社員同士、また社員と会社の相互理解が深まること。だから、各社員が取得できるのは、年に1度というスパンと定めています。

納得できても実行に移せない難しさ

▲これまで集められたストーリーカード

社員数52人のOKANですが、1年間で1000のストーリーを集めたいという目標があります。

手塚 「数値の目標はありますが、WLVSの本来の目標は、価値観を共有し、お互いを理解することでコミュニケーションの食い違いを減らすこと。それによって人間関係の無用な悩みから解放され、働き続けられる環境をつくることです。
だから、実現のためには、52人の社員だけのストーリーでは足りません。これから、どれだけ多くの人、企業を巻き込めるかがキモになってくると思っています」

社外からWLVSを集めるために、採用面談や打ち合わせでに来社された方、また、イベントや、当社主催のカンファレンスなど、さまざまな場でワークショップを行い、ストーリーを書いていただいています。

そして、WLVSがどのような意味を持っていて、社会にとってなぜ重要かということをお伝えすると、重要性への理解・納得を得られ、肯定的な意見を数多く頂戴します。

手塚 「他社から見ても『いいよね』と思ってくださり、実際にその場でストーリーをカードに書き込んでいただいた姿、そしてそれを模造紙に貼り出したものを見たときには、発信してきた成果が感じられ非常に嬉しかったのを覚えています。
とはいえ、『いいよね』と感じることと、自分ごとと考えてアクションするのは別。同じような取り組みをしたい、と考えられるほどの納得感を得ていただけるように、今の伝え方で足りないところを補っていく方法を見つけていきたいですね」

また、別の懸念点もあると手塚は考えています。それは制度の形骸化。

手塚 「審査があるわけではないので、申請すれば、ストーリー認定されるのですが、単に『お休みがほしいから、休みます』となると本筋からずれてしまう
その人が、意欲を持って働き続けられるようにするには何があればいいのか、ということを知りたいので、『休みたいから』『手当がほしいから』という意識の表れになるのは避けたいと考えているんです」

そのためにも、「WLVSの意義をしつこく伝え続けていきたい」と手塚は話します。

手塚 「自分の価値観を顧みることは、生きていく上でとても大切なこと。自分を大事にできないと、他の人のことも大事にできませんよね。なので、意義への理解を得られるような説明は、徹底して行っていきたいですね」

世の中が“幸せ”になるきっかけをつくりたい

▲社員それぞれのWLVS

社内外へと広める活動の結果、現在、約150のストーリーが集まりました。

活動推進の主なメンバーは手塚を含む3名ですが、社員の中には、自ら率先してWLVSについて発信している人も出てきました。

また、お互いに何を大切にしているかがわかっているため、業務中や業務外でのコミュニケーションのとり方をそれぞれが工夫する様子も見られるようになってきています。

手塚 「社内のメンバーの多くが、WLVS制度の価値を実感し、自分ごととして捉えてくれている成果ではないかと感じています。『お休みをとらせてくれてありがとう』という感謝の声が届くのですが、むしろ、『あなたの大切にしていることをわたしたちに教えてくれてありがとう』という気持ちでいっぱいですね。
会社という組織で見ても、社員がどのような価値観を持っていて、どういう時間を大切にしたいと考えているのかを知ることは、組織ビルディング上、重要になってくるはずです。
WLVS制度に理解を示してくれている、ということは、お互いが気持ちよく働ける環境づくりに貢献してくれていることにつながりますから」

しかし、まだまだ課題も残ります。忙しさがゆえに制度を活用できていない社員もまだまだいること。こうした社員も含め、すべての社員が適度な休みを取得できる環境をつくっていくことが必要です。

手塚 「忙しい社員も、大切にしていることがあるはずです。それがなんなのかをもっと社内外に発信してもらいたいと思います。同時に、すべての社員が適度な休みをとれるような環境を会社側でつくっていかないといけないと感じています」

そして、前職で、続けたいのに働き続けられなかったという悔しい想いをした手塚は、今でもそれを「社会全体にとって、大きな機会損失となっているのではないか」と考えています。

手塚 「多様化やワークライフバランスが叫ばれていて、時短や効率化、いろいろの人たちを受け入れようというしくみばかりに目が向きがちですが、働きやすさのために必要なのは、オープンコミュニケーションのできる職場環境づくりではないかなと思っていますか」

この制度はOKANだからこそ成り立つというものではなく、あくまでキッカケづくりのひとつにすぎません。社員のバリューを会社が尊重するというしくみは、どの会社でもつくれる。そして、それが当たり前のことだという社会になってほしいとOKANは考えています。

そのためにも、WLVSのストーリーを社内に閉じた制度にしておくのではなく、プラットフォーム的なものとして、これからは社外も巻き込んでいきたいと思います。

働きたい人が働き続けられる社会の実現を目指して。

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