変わるからおもしろい。セールスフォース・ドットコム役員が語る“挑戦を楽しむ”心構え

「カスタマーサクセスプラットフォーム」としてCRM(Customer Relationship Management)全般に渡るサービスを提供するセールスフォース・ドットコム。SFA(Sales Force Automation)から始め、サービスを拡大してきました。その挑戦の歴史と、挑戦を楽しむための心構えを、「Marketing Cloud」の事業責任者を務める笹俊文が自身の軌跡を振り返りながら語ります。

“ツール”を売っているのではなく、企業文化をつくっている

▲セールスフォース・ドットコム 専務執行役員 ジェネラルマネージャ デジタルマーケティング・ビジネスユニット 兼 クラウドセールス 兼 韓国リージョン 笹俊文

「同じことを3回やったら、飽きてしまうんです(笑)。その点、今はおもしろく仕事ができています。目まぐるしく変わるのがセールスフォース・ドットコムだから」と笑うのは、専務執行役員の笹俊文。セールスフォース・ドットコムの提唱する"カスタマーサクセスプラットフォーム”のうち「Marketing Cloud」を日本で立ち上げた事業責任者です。

「Marketing Cloud」は、顧客やその行動データを可視化し、各顧客のジャーニーに合わせて最適なチャネルで情報を提供することで、企業と顧客の1対1のコミュニケーションを強化できるクラウド型のデジタルマーケティングツールです。

顧客と企業の1対1の関係構築の重要性は、今や多くの企業が実感しています。しかし、2014年の「Marketing Cloud」を立ち上げた当初、国内の状況はまったく違ったものでした。

笹 「当時、顧客一人ひとりに合わせて情報の出し分けをしている企業は、大手でも少ない状況でした。どの企業も、ひとりの顧客に対して、いろいろな部署がそれぞれのタイミングで情報を提供していた。
たとえば、大手家電メーカーならプリンターのブランド、カメラのブランド、そのほか製品ごとにブランドがあったりします。その各ブランドが、製品情報などをバラバラにメールを送っているケースを多く見受けました。
あの頃は、伝え方はともかく、いい製品であれば必ず売れる、というプロダクト・アウトの思想が根強かったわけです。でも、顧客にしてみたら、ものすごい数のメールが毎日届く状態です。顧客が企業とのコミュニケーションに辟易していた時代でした」

多くの企業が顧客との1対1のコミュニケーションの発想を重視しないなか、笹のチームは“新しい市場”、“新しい文化”をつくるという気概で「Marketing Cloud」の立ち上げに奔走します。

笹 「“ツール”を売っているという感覚はありませんでした。Marketing Cloudは、企業と顧客のデジタル上でのあらゆるコミュニケーションチャネルを統合するものです。だから、企業が顧客とのコミュニケーションについて横断的に考える、という文化をつくらないと価値を出せません。
企業と一緒に顧客体験を検証する「カスタマージャーニーワークショップ」を開いて、そのキットもつくるなど、さまざまな工夫をしました。いわゆるツールのベンダーというよりも、企業がいかにカスタマー思考に移行できるかを考えるコンサルタントのようでした」

業種や商材ごとにまったく異なるカスタマージャーニーについて、企業とともに知恵を絞り、どのようなコミュニケーションを取れば次のフェーズ、つまり消費行動に進んでもらえるかを考え尽くす毎日を送っていた笹。

笹 「従来の当社の製品と比べると、 Marketing Cloudの導入はそれぞれのお客様のニーズに合わせることが非常に重要です。企業としっかり話し、販売戦略を一緒に立てる。攻めるポイントは企業ごとに異なります。毎回、各企業に合わせたカスタマーリレーションの文化をつくっていくというおもしろさがありました」

「もっと新しいことを」挑戦を求めて行きついたセールスフォース・ドットコム

▲Salesforce Summer 2016に登壇する笹

笹の社会人としての歩みは、いつも「新たな挑戦」と、その裏返しとしての「興味の移ろい」とともにありました。

1990年、社会人としての第一歩を踏み出したのはITコンサルタント。実は、意図してITの道に入ったわけではありません。

笹 「大学の先輩がいるからという理由で選んだコンサルティングファームでした。経営コンサルタントになるかと思ったら、当時は新卒は全員がIT研修を受けてITコンサルタントになるのが時流。学生時代は文系で、コンピュータなんて触れたこともなかったんですが、これが意外と性に合っていました」

ITの世界で手応えを掴んだ笹の興味を惹いたのは、企業の基幹業務を統合するERP(Enterprise Resource Planning)のパッケージソフトウェアです。90年代半ば、まだ「ERP」の語は一般的ではありませんでした。

笹はERPに惚れ込んだ末に、ERPパッケージを手がける外資系企業の日本法人の立ち上げに参画。マネージャーとしてチームの構築にあたりました。国内にERPが定着し、会社も軌道に乗りつつある。しかし笹には、そのタイミングで気がついたことがありました。

笹 「新しいことばかり手がけていると、何か完成すると、次の新しいことはないか、となる。部署の立ち上げもひと通り経験し、同じことを繰り返すより次のチャレンジに挑みたいといつも思います」

挑戦を求めて積み重ねたキャリアの中には、「大手レコード会社で洋楽部門の部門長」というものも。笹は趣味でバンド活動をしているものの、それまで音楽業界に知見はありませんでした。そんな状況にも「自分よりも専門性のある人を動かすコツをつかめたのは収穫でした」と、こともなげに語ります。

セールスフォース・ドットコムに入社したのは、さらに数社を経てから。

笹 「しばらく ITから離れている間に、エンタープライズのソフトウェア業界が Webベースになり、進化していました。そこで興味が湧いたんです。特に、ERPはボトムライン削減をするためのソフトなので、次はトップラインを伸ばすソフトに関わりたくて。
そんな時に縁があって、セールスフォース・ドットコムに入社しました。しかし、今から思うとすごい転職でしたね。前職の執行役員の立場を手放し、役職など条件面も気にせずセールスフォース ・ドットコムに飛び込みました」

こうして入社したものの、その社風は想像を越えるものでした。

笹 「入社前の面接では『 ERPの導入先として少ない公共や金融分野は知見はありませんが、それ以外は何でもできます』と伝えていました。
しかし入社後にフタを開けてみると、任されたのは公共分野のセールスエンジニアの責任者!セールスフォース・ドットコムは新しいことをどんどん社員に任せる社風なんだと、あらためて悟りました」

公共分野には、独特の入札制度やクラウドへの抵抗感といった難題が山積していました。

笹 「まさに戦いでした。経験が浅いリーダーが来たからチームも大変だったと思います。
ただ、メンバーは公共分野に知見がありましたし、社内には“ Ohana ”(ハワイ語で家族を指す。思いやりや協力で社内の結束を強める、セールスフォース・ドットコムの理念)という家族的な助け合いの文化が根づいていて、周りの仲間に支えられました。新たなチャレンジに際して、協力を惜しまず助けてくれたみんなに感謝しています」

その後、笹は公共分野での活躍が評価され、金融分野の担当を経て、2014に「Marketing Cloud」の立ち上げに合わせ当事業責任者に就任。挑戦のフィールドを拡げました。

「次は“国境を越える”くらいしかない」と考えた矢先、韓国担当の幸運

そして、このほどさらなる挑戦のフィールドとして加わったのが、韓国の責任者というポジション。従来、セールスフォース・ドットコムはアジア地域を「アジア」と「日本」に分類していました。その「日本」に、アジアから分離した韓国が加わりしました。

地理的に近いとはいえ、両国の顧客との接点づくりの手法の違いには隔たりがあります。日本では1対1の顧客との関係がある程度は普及しましたが、韓国ではまだマス・コミュニケーションを活用することで製品を売り込む手法が主流です。

しかし、笹は「英語のコンテンツを日本語にして、ブランドをつくりあげながらクラウドを普及させ……という日本での過程は、同じ非英語圏の韓国でも通じるところはあるでしょう」と自信を覗かせます。

さらに、創業者でChairman Co-CEOのマーク・ベニオフが東アジアの顧客が持つ細やかな視点に注目し、そのフィードバックを世界の製品に反映していることも、笹が韓国での事業展開に自信を持つ要因です。

笹 「私がMarketing Cloudの日本の責任者になった時に、絶対にLINEと提携したいと思っていたんです。驚いたのはベニオフもまったく同じ考えで、私が提案する前に提携が締結されました。
立ち上げの時に、日本市場で何が必要かということをベニオフが考えてくれていたのは心強かったですね。
韓国の立ち上げは、日本が大きな裁量を持って進めています。ベニオフが重視している地域を包括的に任されていると考えると気が引き締まりますし、励みになりますね」

日本でMarketing Cloudを普及させたのとまったく同じ手法が韓国でも通じるか否かはまだ未知数だ、と語る笹。しかし、その状況を楽しんでいるようにも見えます。

笹 「実は、次のチャレンジは、もう“ 国境を越える挑戦 ”くらいしかないと思っていました。だから韓国を担当することになったのは、幸運です」

セールスフォース・ドットコムでの挑戦は、公私に渡ってこれからも

▲バンドではボーカルを務め、率先してチャリティ活動を続ける。

セールスフォース・ドットコムでの挑戦を楽しむ笹は、当社に入る未来の仲間が自分と同じように毎日の挑戦を楽しめるためのアドバイスがあると言います。

笹 「自社の製品の成長も、もちろん大事です。ただし一番の醍醐味は、セールスフォース・ドットコムの製品が日本の企業のあり方を変えるということなんです。今、顧客とのつき合いかたの変革が企業の重要な命題になっています。
新しい市場をつくりながら顧客に貢献できるというのは、他社ではなかなかできないことではないでしょうか。企業を変える、市場をつくるという大きな目標を持って挑戦できる人が、セールスフォース・ドットコムにフィットする人だと思います」

この考え方は、決して笹だけのものではありません。セールスフォース・ドットコムの掲げる4つのコアバリュー「Trust」「Customer Success」「Innovation」「Equality」に凝縮された、すべての社員が持つ考え方です。

「Trust」や「Equality」の価値観は、セールスフォース・ドットコムの枠を超え、社外に対しても発揮されています。企業単体での成功ではなく、社会とともに成長することを重視するカルチャーがあるのです。

たとえば、製品の 1%、株式の 1%、就業時間の 1%を活用して社会貢献活動を推奨する「1−1−1モデル」や社内のサークル「Ohana Group」での社会貢献活動はセールスフォース・ドットコム内にしっかり根づいています。

笹 「自身が大事にする社会的な活動を、社内に普及する。これも挑戦のひとつと言えると思います。私は入社した年に起きた東日本大震災へのチャリティ活動として、社内の協力を得てバンドイベントを続けています。社内から集まったお金を毎年寄付しています」

このような社員共同の取り組みを重ねて、相互の思いやりや協力体制をつくり、社員を「Ohana」(家族)と考えるのがセールスフォース・ドットコムのカルチャーでもあります。

笹は、その家族的な雰囲気を、自らのチャレンジの糧として使っているようです。

笹「 先日、全社員が集まる会で、“ 韓国語の検定を受ける ”、“ バンドを復活して CDを制作する ”という個人的な目標を発表しました。社員に宣言し、自分を追い込まないと、やらないと思ったので(笑)」

笹のセールスフォース・ドットコムでの挑戦は、公私に渡ってこれからも続きます。

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