市場にInnovativeなインパクトを与えるために──独自の「戦略的非上場」

綜合キャリアグループは2018年度で売上1,000億円を突破しました。上場基準をクリアする業績と成長を遂げながらも戦略的に非上場を選択。その理由は、大きく変化する市場環境の中でInnovativeなサービスを提供し続けていくため。独自の「戦略的非上場」についてグループCFO補佐・南順介が解説します。

成長と経営の安定を実現してきた事業投資

綜合キャリアグループはこの2019年3月に大きな節目を迎えました。創業以来のひとつの目標としてきたグループ売上1,000億円を突破し、さらに大きなステージへ挑むこととなります。

人材マーケット全体が「働き方改革」「労働人口減少」「データドリブン/デジタルシフト」などを背景に大きな変革期を迎えている中、綜合キャリアグループも株式市場への上場を意識しなければならないフェーズに到達したのです。しかし、綜合キャリアグループは「あえて上場を選択しない」戦略的非上場という方針を採っています。

南 「上場については数年をかけて社内で検討しました。ですが、メリットとデメリットを見極めた上で、現時点ではデメリットを上回るほどのメリットがないと判断しています。多くの企業が上場をひとつのゴールとしていますが、当社グループは安定した経営を維持できているので、資金調達や事業承継といった喫緊の必要性はありません。
一方で、『長期的な視野で経営が行いにくい』『株主にとっての短期利益が重視される』といった点は機動的な事業開発・事業投資を重視している当社グループにとって、デメリットとなるのではないかと考えています」

綜合キャリアグループの経営は経営指標を見てもきわめて安定しています。売上で前年度比1.24倍の成長を遂げながらもROE(自己資本利益率)は29%と上場企業平均の11%を大きく上回っているのです。

安定感の理由は、これまで幾度もあった市場環境の変化に対して、常に新しい事業領域を切り開くことで次の成長エンジンをつくってきたから。旧来の人材派遣を中心としたビジネスのプレイヤーが停滞を余儀なくされる中、綜合キャリアグループは機動的な事業投資を行うことで長期的な成長と安定した経営を実現してきました。

南 「現在当社グループはいわゆる無借金経営で安定した経営を行っており、財務面の状況については金融機関の皆さまからも太鼓判をいただいています。その上で次の事業の芽を育て、伸ばし、次の成長エンジンへと変えています」

では、この機動的な投資と「戦略的非上場」という決断はどのような関係にあるのでしょうか。

事業投資を支える「戦略的非上場」

南 「綜合キャリアグループは創業時から新しい事業領域への挑戦を続けて勝ち残り、大きくなってきた会社です。古くは紹介予定派遣が法制度化される前から、顧客のニーズに応えてサービス化しています。
その後も直接採用支援や勤労者資質の向上プログラム開発、人事労務クラウドサービス、震災復興からの再就職支援など、さまざまな領域で顧客ニーズと求職者ニーズに応える事業開発を行ってきました。私たちにとって、新規事業領域へのチャレンジは創業の『イズム』そのものです。ですから、新事業への投資をどう行うべきか、というテーマは経営の最大の関心事でした」

新規事業への投資、と聞けば株式市場への上場と資金調達、さらに人材やパートナー企業の獲得などは相性が良さそうに聞こえます。しかし、あえて『戦略的非上場』を選ぶ理由はなんでしょうか。

南 「綜合キャリアグループが事業投資として行っている施策は、主に『事業開発への投資』『技術取得への投資』そして『人材への投資』です。しかし、これは M&Aなど、他社からリソースを買ってくるアプローチとは異なるものです」

「事業開発への投資」は具体的には事業運営組織の人件費、設備投資(オフィスなど)、広告費と言った事業活動費です。綜合キャリアグループではマーケティングから事業スタートまで迅速に進められ、立ち上がるまで長期的に投資します。

「技術取得への投資」は主にパートナー企業との協業を通して実施。マーケットの動向や法制度変更などを見て機動的に投資を行っています。綜合キャリアグループには100名規模のシステム部門があり、自社でシステム開発を行うことも。しかし、ブロックチェーンやAIなどの新しい技術は、外部パートナー企業との協同開発などを通して導入を行っているのです。

そして「人材への投資」は創業以来続けている教育への投資と、給与をはじめとする待遇面での投資です。継続的な理念教育やキャリア教育、年3回の賞与を中心とした高い労働分配率と、チームワークを醸成する仕組みにもコスト投下を惜しみません。こういった人材育成への投資によって、新規事業にチャレンジできる人材や組織を、外部ではなく自社内で調達できているのです。

これらの投資はリスクの高さやコスト回収にかかる長さから、「長期的な視野で経営が行いにくい」「株主にとっての短期利益が重視される」という上場企業の特性とは相性が悪い。ですが社を支える根幹であり、上場のメリットと比較したときにより優先されるものと考えています。

会社の成長のために続けた「機動的な投資」

南 「今、人材マーケットは大きな変革期にいます。多様なビジネスモデルが生まれ、デジタルトランスフォーメーションが金融や ITといった異業種との垣根を越えて、サービスを形づくろうとしています。ただの人材サービスでは勝ち残っていくことはできません」

綜合キャリアグループは事業投資をすることで成長し続けてきた会社です。これまでも、これからも。そんな綜合キャリアグループが、実際に今注力している事業投資は──。

南 「まず、すでに事業として大きな成長エンジンとなっているのが『物流人材サービス事業』『 BPO事業』です。このふたつは約 10年前からスタートし、それぞれ 100億円規模の事業へと成長しています。
また広告運用技術の蓄積を生かした『 Web・アドテク事業』、学生とのコミュニケーションを通して事業化した『新卒就職支援事業』などは、この数年で急速に立ち上がり、次の事業成長エンジンとして期待されているのです。
それ以外にも、グローバル人材採用支援や海外BPO事業、障がい者採用支援、育休からのリワーク支援事業など、ダイバーシティを実現する社会的事業にも注力。これらの新規事業はグループ内の人材を機動的に配置することでスタートアップ期の加速を実現しています」

また、さらに成長とサービスのモデルの変革をうながすために持続的な事業投資もなされていて「物流人材サービス事業」ではAIを用いた需要予測や自動マッチングが実用フェーズに移行。BPO事業では、人材不足から生まれるニーズに応えるサービスを強化したりと、着実に成果があがっています。

また、成果はこれだけにとどまりません。海外メガベンチャー企業の国内事業展開を支援した実績もある「フィールドアウトソーシング」や、大手スマートフォンメーカーの緊急案件に応えた「オフサイトサービス」など、既にサービスインしている商材が多数あります。

南 「すべての事業投資が成功しているわけではありませんが、成功するまで展開するのが当社グループのやり方です。
ひとつの例として、勤怠管理システムの T - REXというものがあります。 2007年にスタートしたデジタル勤怠システムで特許も取ったのですが、まだ時代が早かったのか当時は自社内の勤怠自動化でしか展開されず利用者も数万人程度でした。
しかし、働き方改革で長時間労働の是正が焦点になったことで、先見性のある機能が注目され今改めて事業が伸びています」

年商1,000億円は通過点──求め続ける成長と挑戦

南 「繰り返しになりますが、当社グループは事業開発、事業投資を通して成長してきました。この事業投資をベストなタイミングで機動的に展開できる環境を整えるのが財務の仕事です。
これまで、事業投資ができる利益の確保と、事業展開にチャレンジできる内部人材の育成を重視してきました。今後はさらに外部からリソースを獲得していくことも重要だと考えています」

事業投資に必要な外部リソース、というと資金と人材を想定しがちですが、南は「情報」「パートナー」「専門人材」の3つを獲得したいと話しました。

南 「ただ売上規模の拡大を考えるのであれば話は簡単です。既存のビジネスで売上規模がある程度以上の競合企業を買収すればいいんです。実際、人材業界ではここ数年で多数の M&Aがありました。ですが、当社グループでは自前で人材を育成しサービスを強化することで、自力でマーケットを開拓していく方が長期的にメリットが出ると考えています。
そのために必要なリソースとして、サービスや事業に投資するべきマーケットの情報や、技術面でのパートナー、当社で事業開発を手がけてみたい専門人材などを獲得することが、より重要度の高いミッションになるでしょう」

こういった狙いで現在取り組んでいるのが、金融機関や協力会社とのパートナーシップ、人材採用活動といったネットワークを広げる活動です。

南 「綜合キャリアグループは、 2020年の売上 1 , 460億円という目標を掲げていますが、そう遠くない先には年商 2 , 000億円、 3 , 000億円と言った数字も間違いなく見えてきます。そこに向けてさらに事業投資をできる、社員が新しい事業にチャレンジできる環境をつくっていくのが、財務を預かる私の仕事だと考えています。顧客と市場に Innovativeなインパクトを与えたい。そのために全力でやっていきます」

長期的な目線で会社の未来を見据え、社内の体制を整えてきた綜合キャリアグループ。その“会社力”で新規事業を果敢に開拓することで大きくなってきました。

それはもちろん、この先も──。

年商が1,000億円を突破し、それでも会社の根幹となる戦略を大事にするべく、非上場という独自の選択をしました。これから先も、その独自性と自走力で綜合キャリアはさらに次のステージへと進んでゆくのでしょう。

南は 2020年の売上 1 , 460億円という目標ですら通過点だと語りました。まだまだ綜合キャリアの成長は、始まったばかりなのです。

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