最高の医療技術を日本に導入したいーー外資系企業のマーケターが目指すもの

新卒で旅行会社に入社後、外資系医療機器メーカーでの営業を経て、マーケティングマネジャーへ。日本における脳血管内治療の分野で今廣 敬仁が目指したのは、「グローバルにおける日本の存在価値」を高めること。そして、より多くの人に適切な治療を拡大していくことでした。

言い訳できない環境で仕事がしたい。旅行会社から医療業界への転身

学生時代何度も訪れた海外に惚れ込み、グローバルな仕事がしたいと旅行会社に就職した今廣。短期間でより多くのスキルを獲得するため、多様な業務に関わることのできる会社を選びました。

企画、営業、そして添乗員までをこなしながら、顧客が求めている夢のある無形商品を提供することに喜びを感じていた旅行会社時代。大手が大々的に扱うメジャーな観光地ではなく、ブータンやリビア、パタゴニア地方など、旅慣れた人の新たな感動につながる商品を取り扱っていました。

今廣 「旅行会社には、南米を何度も周遊した人や、中東に友だちがたくさんいる人、ヨーロッパに何年も住んだ経験を持つ人などがいて、グローバルで多角的な視点・考え方があることを学びました。
自分が企画に携わり販売したツアーに参加したお客さまの感動を、添乗員として共有できることにも、大きなやりがいを感じていましたね。
ただ、どれだけ魅力ある商品を販売しても、行く先の天候や不測の事態などにお客さまの満足度が左右されることは避けられず、外的要因を言い訳にできない、自分の努力がダイレクトに結果に反映される環境で自分を試してみたいと考えるようになりました」

「社会人として3年間経験を積んだら、それをもとに次のステージにステップアップしたい」、かねてよりそう考えてきた今廣は、医療機器メーカーであるボストン・サイエンティフィック ジャパン社に入社を決めました。

医療業界は身近ではなかったものの、紹介してくれた人の話を聞いて、これまで培った営業力がいかせること、また、それまで知りえなかった最先端の医療情報に触れることができる環境にも魅力を感じたといいます。

「こんなに売っているのに、注目されていない」ショックがひらいた新たな道

今廣が配属されたのは、脳疾患に対するインターベンション治療製品を扱う『ニューロバスキュラー』事業の営業部。入社した2003年当時、日本ではまだ歴史の浅い新しい治療法を、ドクターとともに確立していく段階を迎えていました。

今廣は営業担当、直接患者さんの治療にあたるわけではありません。それでも、ドクターが新しい治療法を取り入れるサポートができること、くも膜下出血で倒れた患者さんの治療が成功し、家族が安堵する表情を目の当たりにしたとき、自分が誰かの役に立てたことに、大きな喜びを感じたとふり返ります。

その後、2011年にストライカーがボストン・サイエンティフィック社のニューロバスキュラー事業を買収。今廣は日本ストライカーの社員となり、同事業部で営業を続けました。

同じ年、今廣は営業成績が評価され、はじめてグローバルセールスミーティングに出席する機会を得ました。

旅行会社から転職後、ずっと外資系企業で働いてきたものの、自分が仕事をしている会社がグローバルカンパニーであることをこの時はじめて認識したという今廣。目先の売り上げを追いかけることに必死だった自身の仕事について、改めて考えるきっかけになりました。

今廣 「日本の事業部は営業チームの結束が固く、活動のクオリティも高いうえに成果も出しています。でも、グローバルな視点から見ると、日本の存在感はとても小さいものだったと感じました。
国別の売り上げでは、日本は1位のアメリカに次ぐ成績なのに、グローバルセールスミーティングではアメリカやヨーロッパの話に終始して、日本の話が出てこないんです。これには驚きました」

新しい治療法に対して保守的と言われ、医療機器の承認にも時間がかかっていた日本に対し、欧米では臨床での実績が何年も積み上げられていました。インパクトのある話題の少ない日本での事例が取り上げられないのは、当然の流れとも言えました。

それでも今廣は、日本の売り上げ規模、営業部のクオリティの高さをもってすれば、この状況を変えられるチャンスがあるはずだと考え、マーケティング部への異動を願い出ました。

信頼関係と細やかな情報発信で、日本の存在意義を高める

今廣がマーケティング部へ異動した頃、日本ストライカーは虚血性脳卒中(イスケミック)領域への本格参入を控えていました。

成長が見込まれるものの、世界では他社がリードしていた分野。今廣は、この分野こそ日本ストライカーが注目を集めるチャンスだと判断し、営業部と連携して販売活動を展開しました。一方で、米国本社とのより細やかな関係づくりもマーケティングの重要な仕事であると考え、力を入れてきました。

今廣 「日本人と欧米人とでは脳疾患で運ばれてくる患者さまの年齢にも差がありますし、血管の太さや蛇行の程度が微妙に異なるため、ドクターが製品に求めるものも違います。欧米でよく売れている製品でも、日本ではニーズに合っていないケースもあります。
新しい製品の開発に日本からの意見を反映させることで、日本のドクターや患者さまに寄与できると考えています。そのためには各場面で成果を出し、まずは米国本社に信頼してもらうことが重要です。難しさはありますが、日本だから得られたデータや知見をもとに、われわれならではの取り組みを続け、それを発信し続ける必要があります」

日本の存在意義を高め、日本の医療に貢献したいという今廣を、支えていた言葉があります。それは、旅行会社で一緒に仕事をしていた10歳ほど年上の先輩の言葉。物事をポジティブにとらえ、エネルギッシュに前進していく太陽のような女性だったと話します。

今廣 「その先輩によく言われたのは、『自分に正直になりなさい』ということ。無理していることや、自分にウソをついてまでやることは続かない。自分自身は何がしたいのか、本当はどう思っているのかにきちんと向き合い、納得して仕事をするためには何が必要なのかを考えなさいと教えられました。それしか結果につながる道はない、と」

その言葉を胸に、今廣は日本のニーズや意見を的確に伝え、率直なコミュニケーションを積み重ねることで、米国本社メンバーとの信頼関係を築いてきました。

また、営業を担当していたころと同じように、開発や治療のキーマンとなるドクターとも常に良い関係でいられるように、相手のニーズを第一に考えながら細やかなコミュニケーションを心掛けています。

今廣 「会うことが一方的な押しつけにならないよう、ドクターと仕事以外の共通の話題も探します。私の場合は、旅行会社時代に培った海外の話題がいい潤滑剤になっています」

正直に。支えてくれた言葉が生きるチームとともに、日本の医療に貢献したい

最先端医療は成長市場であることから競合の参入が激しく、新製品が短い期間で導入されます。会社全体だけでなく、営業やマーケティングに関わる一人ひとりも浮き沈みを経験する業界です。

まだドクターとのつながりが浅い若手の営業担当であればなおさら、売り上げの良し悪しがモチベーションに直結してしまう怖さもあります。

今廣 「若い社員に伝えているのは、目先のことだけで一喜一憂せず、苦しい時ほど顔を上げて中長期の視点をもつことが大切ということです」

滅入っている時ほど判断を狂わせます。「目線を上げ、自分に正直に問うこと、本当に大切にすべきことは何なのか」――短期的な視点で数字を厳しく追わざるをえない業界だからこそ、それを貫くことが結果につながる。「言い訳をして逃げるのではなく、向き合い方を考えることで結果は出していける」と今廣は考えます。

ドクターにも、米国本社にも、今廣はいつも現在の実力値や自分たちの思いを率直に相手に伝え、何ができるのかを提示してきました。

今廣 「日本ストライカーは、社員の働く気持ちやモチベーションを大切にする会社です。情熱と誇りをもって誠実に仕事に向き合う社員には、惜しみないサポートを与えようとしてくれる会社なんです。情熱を隠さずに自分らしく仕事ができるのも、正直な自分でいられる安心感があるからです」

日本ストライカーの存在意義にこだわり、マーケティング部での業務を進める。日本のドクターの声を海外の同僚に率直に伝え続けてきた今廣の奮闘は、誇りを持って日々の業務に邁進する仲間たちとともに、日本の脳血管内治療の前進に寄与してきたのです。

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