“想い”と“特殊能力”を掛け合わせ、変革を目指す「JIKKEN Company」

東芝グループの生産拠点のひとつ、府中事業所。約1万人の従業員が勤務しているこの拠点をベースに、2019年4月、グループ横断プロジェクト『JIKKEN Company』が始動しました。「会社の変革」をテーマに掲げ、結成の呼びかけを行ったのは、当社の中堅社員・髙山亮でした。

会社の危機を、契機に変えたい

東芝インフラシステムズで府中事業所の企画・管理部に在籍し、建築担当として「社員の働く・暮らす」環境をサポートする髙山。これまで数多くのオフィス、工場、社員食堂などの建設や整備にあたってきました。

髙山 「私のお客様は東芝グループの従業員。常に社内に目が向いているため、組織や体制上の課題をキャッチしやすい立場にあります。当然、解決の糸口となるアイデアも出てはくるんですが、なかなか新たな提案が受け入れてもらえない風土で。そんなジレンマを抱えながらも、『旧来の体制やルールを変えたい』『社内をもっと効率化・活性化させていきたい』という想いは常に持っていたんです」

幾度となく頭をよぎった「会社を辞める」という選択肢。それを現実のものにしようとした矢先、会社を揺るがす出来事がありました。2015年5月に発覚した不正会計問題から始まった経営危機です。復活のためには、経営基盤の強化やガバナンス・内部管理の強化のみならず、企業風土の変革が必要とされました。

髙山 「不謹慎ながら、これは会社が変われるチャンスだと思いました。社員の離職が相次ぐ中、私は『これからは新しい提案が受け入れられる時代になるかもしれない』と、あえてこの場所に留まることにしたんです」

しかし、創業140年の大企業において、脈々と築き上げられてきた社風はすぐに変えられるものではありません。「失敗が許されない風潮」や「前例がないことへの抵抗感」は根強く、髙山はそのハードルにたびたび苦心します。

2018年4月。髙山にとってさらなるターニングポイントが訪れます。東芝に新会長兼CEOが就任し、グループ各社・各拠点に「東芝NEXTプラン」策定に向けた素案提出が命じられたのです。

髙山 「それが『変革をテーマに掲げた事業計画』だと聞き、即刻提案書づくりに着手、翌日には上司に提出しました。実は無断で作成したものだったのですが、部長にも所長にもトントン拍子で認められ、提案書の概念が計画の軸として採用されることになったんです。驚きました」

入社から10年、温めていた髙山のアイデアの数々が、ようやくここで日の目を見ることになったのです。

変革を目指し“実験”で化学反応を起こす

2018年11月に社内外に向けて正式に発表された「東芝NEXTプラン」。これを機に髙山自身が社内に呼びかけ、新たに結成されたのが、ボトムアップ型横断プロジェクト「JIKKEN Company」です。約1万人の従業員が働く府中事業所内で横の連携を行い、パフォーマンスを発揮できるフィールドをつくり出すことで変革につなげるのが狙いでした。

実はその前に、髙山は別のプロジェクトを立ち上げています。「Project HADO」です。

髙山 「一言でいうと、働き方改革を見据えたオフィス変革プロジェクトでして。従業員にとって最も身近なオフィスが変われば気持ちが一新し、一人ひとりの働き方にも良い循環が生まれるという考えのもと、起案しました。プロジェクト名は『最初の一滴となって、グループ全体への波動( HADO)となり大きな変化へとつなげたい』という想いに由来しています」

この取り組みのもうひとつの特徴はプロトタイプ、つまり試作的要素を含んでいるということ。社内の技術者や社外の協力会社を巻き込んで「このスペースでやってみたいこと」を募り、オフィスの内装や設備に盛り込んでいきました。この実験的な試みが「JIKKEN Company」を結成する足がかりになりました。

「JIKKEN Company」の“採用”活動は、約200人が参加した2019年のグループ新年会から開始されました。メンバーを募るにあたり髙山が意識したのは、変革への想い、そして業務に生かしきれていない“特殊能力”でした。一人ひとりの特殊能力を掛け合わせれば、化学反応が起こると考えたのです。

立ち上げメンバーのひとり・立山紫野はジョインした経緯についてこう語ります。

立山 「初めて髙山と会ったときに『東芝にこんなことを考えている人がいるんだ』と嬉しく思ったし、プロジェクトの話を聞きながらワクワクする自分もいて、参加することに決めました。
私の本業は保健師ですが、髙山に得意なことを聞かれ『イラストを描くこと』だと伝えたら、プロジェクト参加後、すぐにそれを特殊能力として生かしてくれて。そのスピード感にも圧倒されましたね」

立山は、実はJIKKEN(実験)というプロジェクト名の考案者であり、ロゴデザインを施した人物。始動する前から、すでに「JIKKEN Company」における化学反応は起きていたのです。

会社への想いを形にできる表現力が「JIKKEN Company」の強み

▲JIKKENメンバーと株主

「JIKKEN Company」の“社長”となった髙山の積極的な採用活動によって、イラスト、動画、作曲、カメラ、司会などの技術・特殊能力を持つ多彩なメンバーで結成されることになった「JIKKEN Company」。2019年4月よりオフィシャルな組織として本格的に始動しました。

髙山 「そもそもあまり前例のない取り組みなので、注目されることはある程度承知していましたが、スタートしてすぐにオファーが舞い込んだのは想定外でした。『 JIKKEN Company』自体のネーミングやロゴが目を引いたようで」

依頼内容は「新しい場所をつくるのでロゴとネーミングを考えてほしい」「新しく導入する設備に愛着を持ちたいのでロゴを考えてほしい」「会議室をプロデュースしてほしい」といった具体的なものばかり。さっそく従来の業務の合間を縫って、特殊能力を持ったメンバーたちと作業に励む日々が始まりました。

髙山 「それからは仕事が仕事を呼ぶといった感じで、各所にどんどん依頼主が増えていきました。たとえば会議室のプランニング内容を作成した動画で展開したら、それがきっかけとなって『お客様・学生様向けの部門紹介』や『新製品取扱説明』などの他の動画作成依頼につながって。
技術的にはプロの動画制作会社に劣るかもしれませんが、会社への想いを強く持ち、その想いを形にできる社外にはない表現力が『 JIKKEN Company』にあると自負しています」

こうして順調な活動を続ける一方で、「職場の理解を得られない」「組織を超えた活動では評価されにくい」など、ボトムアップ型プロジェクトならではの課題も根強く残っていました。

その空気感を大きく変えたのが、2019年8月1日に実施した「株主総会」でした。

髙山 「プロジェクトとはいえ、 Companyを名乗っているので、トップやメンバーの上司など “株主 ”に対して定期的に成果発表の場を設けることは決めていました。約 70人の株主が参加しました。
当日は成果の発表だけでなく、社内仮想クラウドファンディングも “JIKKEN ”。 JIKKEN STUDIOというチームが独自に制作した東芝グループのCM動画を見てもらい、『どれぐらい心が動かされたのか』その気持ちの大きさを仮想の小切手で投票してもらったんです。その結果、なんと 1,144万円以上になって」

2019年10月現在、府中事業所のエントランスにある大型モニターにはこの1分半の動画が流れています。動画の持つ可能性、そして「JIKKEN Company」の想いが認められた何よりの証しとなりました。

「楽しい」から生まれる持続性と「特殊能力」で職場を幸場に

▲株主総会の風景

株主総会後の余波は他にもありました。まず、「JIKKEN Company」の取り組みをまとめ、不定期に配信している「JIKKEN NEWS」の再生回数が2000以上も増えたこと。そして、この取り組みに心から賛同してくれる株主が現れたことです。

髙山 「そもそも売上を立てることができない私たちに、『どうしても報酬を払いたい』『せめて足りない機材を買ってあげたい』と申し出てくれた株主もいて。その気持ちがうれしくて、みんなで号泣しちゃいました」

スタートから5カ月で、加入メンバーは70人を超え、さらに同じ東芝グループの生産拠点である小向事業所でもその活動の主旨に賛同して、『JIKKEN KOMUKAI』が立ち上がりました。

“「楽しい」から生まれる持続性と、「特殊能力」の掛け合わせによる大きなシナジーを生み出す”──これはあるメンバーから寄せられたコメントです。

今や府中事業所を飛び出し、他の拠点・グループ会社とも想いをつなげ活動を続ける「JIKKEN Company」。社長として先導する高山は、今後の展開をどのように描いているのでしょうか。

髙山 「実はスタート当初から、 2019年から 2022年までの 3年限定プロジェクトと決めているんです。もともと『東芝 NEXTプラン』が形になっていく 2023年に、 JIKKENではなく JISSEN(実践)することを視野に入れているので。
何か新しいことを始めようとするとき、種を蒔いて花を咲かせるまでにだいたい 3年はかかります。スタートアップフェーズは、だらだら続けてしまうとその後失速してしまう可能性が高いので、あらかじめ活動する期間を決めておいたんです」

髙山の心を奮い立たせ、行動へと向かわせた『東芝 NEXTプラン』。そこには「ベンチャースピリット」「ベンチマークは社内ではなく社外」といった、これまでの会社資料にはないワードが躍っていました。

髙山 「このプランに目を通したとき、膠着していた東芝グループに新しい風が吹いた、ようやく会社が変わる ──そんな印象を受けました。同時に私の脳裏に浮かんだのは、会社が持つ資産、つまり人材です。目の前にある特殊能力や技術を生かすフィールドをつくり出せば、職場(工場)は幸場(こうじょう)になりえると考えたんです」

東芝グループ社内には、今、確かな変化の兆しがあります。まだスタート地点に立ったばかりという「JIKKEN Company」ですが、この事実がすでに功績であることは間違いありません。

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