ユニクロのカスタマーセンター改革──お客様の声と向き合い、実態を変え、還元する

創業以来、お客様の立場に立つことを徹底してきたユニクロ。eコマースの販売規模が拡大する中、お客様との重要な接点となるカスタマーセンターの改革に乗り出しました。ユニクロのカスタマーセンターは、商品やサービス開発、さらには経営戦略に直結する重要なセクションへと変貌しようとしています。

“求められているものだけ”をつくるために、お客様との接点を進化させる

▲グローバルデジタルコマース部 部長の松山真哉

「お客様の立場に立脚する」──。これはユニクロが創業以来大切にしている価値観のひとつであり、変わることのないユニクロの強みです。お客様の満足のためにいちずに活動することでユニクロは成長を続けてきました。

しかし、顧客中心のサービスを実現させるためのあり方は、常に進化させなくてはなりません。そこで2017年からユニクロが着手したのが、“カスタマーセンター改革”。eコマースによる販売が拡大を続ける中、お客様との重要な接点となるカスタマーセンターの重要性が、かつてなく高まっていたからです。

こうした問題意識を背景に、カスタマーセンター改革のミッションを与えられたのが、カスタマーセンターの部長に着任した松山真哉です。彼は、改革前のカスタマーセンターについて、このように振り返ります。

松山 「当時のカスタマーセンターは、店舗を運営する営業部の一部として、お客様からのお申し出に対して個別的に対応をすることが主な役割でした。また、国内のカスタマーセンターは内製化していたものの、海外拠点のカスタマーセンターはアウトソーシングをしていたんです。
お客様の声を商品やサービスの改善に活用できるような体制ではありませんでした。そこで、 2017年からカスタマーセンターは、世界中からお客様の声を収集し、全社の活動に反映させる重要なセクションとして位置づけを変えることが決定されたんです。海外拠点も含めカスタマーセンターをすべて内製化し、抜本的に改革を進めることにしました」

松山が思い描いたカスタマーセンターの新たな役割は、商品やサービス開発の“起点”となるもの。業務プロセスの下流から上流に押し上げ、お客様の声をリアルタイムに経営者や全社に循環させる姿を目指したのです。

「つくったものを売る商売」から「求められているものだけをつくる商売」へ──。変革に向けた挑戦が始まりました。

「20年前のレベル」と呼ばれたユニクロのカスタマーセンター

▲ともに改革を進めてきたグローバルデジタルコマース部のメンバー

カスタマーセンター改革にあたって、松山が最初に取り組んだのは、戦うための“基盤”づくり。理想とするカスタマーセンターを実現するには、ただ業務プロセスを変えるだけではなく、人材、そしてテクノロジー活用のレベルを高めなくてはなりません。

松山 「お客様との接点に関する知見を求め、中途採用ではコールセンター経験者のみならずマーケットリサーチャーや、 AIチャットボットなどの専門知識を持った人材を採用しました。さらに、ユニクロの店舗運営で活躍しているマネージャー層にも新たに加わってもらいました。そうしてでき上がったのが、コールセンターのプロや、ユニクロの商売のプロなどさまざまなバックグラウンドを持つ多様な人材が集まったチームです」

業務改革を進める中、松山が感じ取ったのが「お客様の声を無駄にしてはならない」というメンバーの使命感。松山のもとに寄せられた多くの意見から、従来のカスタマーセンターが抱えていた問題点が浮かび上がってきました。

松山 「ある中途採用のメンバーからは、『申し訳ないけれど、ユニクロのカスタマーセンターは 20年前のレベルです』と言われてしまいました。そこで、イチから勉強し直すつもりで国内外にある他社のコールセンターをリサーチしたんです。その結果、環境整備やテクノロジー活用など、私たちが埋めるべき “差分 ”が見えてきました。
同時に明らかになったのが、ユニクロの “強み ”。私たちは、企画・生産・販売まですべてを自前で手がけています。つまり、お客様の声をダイレクトに商品やサービスに反映できる環境がある。これは他社との大きな差別化要因になると考えました」

ユニクロのカスタマーセンター改革が、成長のエンジンになりうる理由。それは、ユニクロが服づくりにおいて掲げている「LifeWear」というコンセプトからもおわかりいただけるかもしれません。

──あらゆる人の生活を、より豊かにするための服。美意識のある合理性を持ち、シンプルで上質、そして細部への工夫に満ちている。生活ニーズから考え抜かれ、進化し続ける普段着。

生活必需品であるエッセンシャルな服へ、毎シーズンお客様の要望を反映させ、LifeWearとしての完成度を上げ続ける。そのためにお客様の声は何よりも大切なもの。2017年からスタートしたカスタマーセンター改革は、LifeWearをどのようにアップデートしていったのでしょうか?

「ご意見をお聞かせください」が、ユニクロのサービスになる

「20年前のレベル」──。そう呼ばれたユニクロのカスタマーセンターは変革を遂げました。たとえば、チャットボットや有人チャットサービスによるお客様応対の割合が70%を超え、メールや電話にかける事務量が大幅に減少。スタッフがより深くお客様の声に耳を傾けられる環境が整いました。

松山 「テクノロジーを導入するときは、その導入自体を目的とするのではなく、『なんのためか』ということを見失ってはなりません。その点はメンバーがそれぞれに意識したポイントだと思います。たとえば、チャットボットは、お客様のお問合せ内容やそれに対する回答を常時確認し、メンテナンスし続けなければいけません。導入して終わりではなく、メンバーはチャットボットが最適な回答を行えるよう、情熱を持ってまるで自分の子どものように学習させ、メンテナンスしています」

さらに、マーケティングオートメーションを実装し、商品を購入したお客様へ個別に連絡し、商品レビューを効果的に集めることも可能になりました。お客様の声を数多く集め、商品やサービス開発に生かす体制になったことで、カスタマーセンターのスタッフの意識にも変化が見られるようになったのです。

松山 「お客様の声を積極的に聴こうという空気が浸透してきたと思いますね。驚いたのは、商品開発の責任者から、『ワイヤレスブラ』に関する意見を求められた後のスタッフの対応でした。というのも、商品とは関係のない問い合わせをされたお客様に対しても、ワイヤレスブラについて意見を求めているという話を聞いたんです。
その話を聞いて、私は『やりすぎじゃないのか』と心配になったのですが、実はお客様からは『聴いてくれてありがとう』という声が多く寄せられているとのことでした。考えてみると、誰でも服に対する悩みや意見をお持ちで、『意見を聴く』ということ自体が、差別化されたサービスになりうるのでしょう。これは、お客様の声を商品に反映させられるユニクロだからこそ発揮できる価値と言えます」

このようにして集まったお客様の声は、実際の商品開発に次々と生かされていきました。その結果生まれた商品は、ユニクロのWebサイト上に設置した「ユニクロアップデート」というコーナーで公開。チクチクしにくいニット商品、お腹周りの肌触りにもこだわった マタニティボトムといった、お客様のご要望に沿った商品が、次々と生まれています。

お客様の立場に立脚できているか?その問いが新たな革新を生む

カスタマーセンター改革がスタートして、2019年で約2年が経ちました。業務効率化や、お客様の声の商品やサービスへの反映、求人応募者の増加など、一定の成果を得ることができました。しかし、これで終わりではありません。松山は、「目指すレベルに比べると、まだ30%程度」と語ります。

松山 「社長の柳井からも、『まだまだ』と言われています。今後取り組みたい課題としては、大きく 2点です。ひとつは、カスタマーセンター改革をグローバルに広げていくこと。今は日本国内を中心に改革を進めていますが、これを海外に広げ、世界中のお客様の声を集められる体制をつくりたいと考えています。
もうひとつは、集まったお客様の声をさらに活用することです。以前と比べると、お客様からのご要望にクイックにお応えできるようになっていますが、これだけでは不十分。集まった声を俯瞰し、本質的な課題やチャンスを発見し、よりお客様に喜ばれる商品やサービスを生み出していきたいですね」

こうした挑戦は、“お客様のためを思う姿勢”が根づいているユニクロだからこそ実現できると松山は考えています。

松山 「私は、ユニクロに転職して 18年が経ちましたが、常にお客様を第一に考える姿勢が会社の絶対的な判断基準として変わらずにあるからこそ、仕事に打ち込めていると感じます。純粋に “お客様のために ”ということを中心に考え、判断基準となっている会社だから、それ以外の余計なことに時間を使ったり、迷ったりする必要がありません。
社長の柳井自らが、お客様の立場で考えることを常に徹底していると思います。私たちから、少しでもお客様を中心に考えられていない言動があると、柳井からすぐに『それは会社都合でしょう』と指摘されます。常にお客様と正面から真剣に向き合い、自らを変え続けられる会社ならば、悪い方向に向かうはずがないと私は信じています。
ユニクロが培ってきた強い企業カルチャーに加え、新しいテクノロジーを活用したり、専門人材にチームに加わってもらったりすることで、まだ世の中には存在していない水準のお客様中心の会社になれるはずです。そのためにできることはまだまだたくさん残っています」

世界中のお客様の要望を可視化し、期待に応え続けることがユニクロのカスタマーセンターの役割。「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」──。そのために、これからも飽くなき革新と挑戦を続けます。

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