「何があっても嫌いにならないこと」を仕事に。飛び込んだ保育の世界

▲自らが巣立った幼稚園に、今度は幼稚園教諭として毎日通うことに

つらくても、自分が絶対に嫌いにならないことを仕事にしたい──。

自らの進路を選ぶ際、守隨の頭に浮かんだのは、こんな考えでした。

もともと本や文学の世界が好きだった守隨が、自分にとっての一番を突き詰めて残ったのは、「子どもが好き!」という想い。悩んだ末に選んだのは、幼稚園教諭の仕事でした。

守隨 「子どものころに通っていた幼稚園に就職しました。当時園長先生だった理事長先生とはずっと年賀状のやり取りもしていて。採用試験に合格したときは『ようこそ佑果ちゃん』と、温かく迎え入れてくれましたね」

子ども時代の思い出が残る幼稚園で、自分を育ててくれた先生方の指導を受けながら、大好きな子どもたちの成長を見守る──。

そんなとても充実した日々を過ごします。

しかし、幼稚園教諭として4年間勤めたころに芽生えたのが「大好きな園だけど、外の世界も見てみたい」という想いでした。転職先に選んだのは、絵本の出版社。

7年間、絵本のプロとして活躍し、狭き門とされる「絵本専門士」の資格も取得します。

守隨 「自社の絵本の PRだけではなく、幼稚園や保育所で絵本の読み聞かせをしたり、絵本のレクチャーをしたり、どんな絵本を置けばいいか選書のアドバイスなどを行ったりしました。前職で保育の現場を経験してきたことが役立ちましたし、自分の強みにもなったと思います」

こうして保育と本という、自分の好きなことを両方仕事につなげてきた守隨。しかし、さらなるチャレンジを決意します。生まれ育った愛知県を出て、次は関東で暮らしてみたい、仕事の面でもキャリアアップして、違う世界を見てみたい──そんな考えから、2017年4月、横浜に本社を置くヒューマンスターチャイルドに入社したのです。

ゼロから何かをつくり出す経験がしたい──憧れが現実になる

▲幼稚園教諭と絵本出版社での経験を生かし、スターチャイルドでは本部と保育現場をつなぐ役割を担う

入社後、守隨が配属されたのは、スターチャイルド事業部施設運営1課。「フィールドサポーター」という職種です。

守隨 「簡単に言うと、本部と現場をつなぐスーパーバイザーのような仕事です。自分が担当する保育園を定期的に訪問し、第 3者の視点からより良い運営や保育環境にしていくために、共に考えアドバイスを行ったり、施設長やスタッフの相談に乗ったりします。
私は人と接することが好きで、いろいろな現場を回るのも好きなんです。自分の『好き』が生かせる仕事を選びました」

その一方で、守隨には、“好き”という想いだけではダメなのではないか、自分にできることをやる、与えられた仕事をこなすというだけでは不十分ではないか、といったモヤモヤとした想いもありました。

もっとクリエイティブな、ゼロから何かをつくり出すような経験をしてみたい──そう考えていたところに、2018年5月、上司から新しい仕事のオファーが舞い込みます。それは、「スターチャイルドオリジナルの幼児用玩具をつくること」でした。

守隨 「実は入社後、『なないろワーク』というオリジナル教材の制作にも携わらせていただいたのですが、ゼロからの制作ではありませんでした。でも今回の案件は企画から製品化まで、文字通りゼロからつくり上げていく仕事。そんな仕事を未経験の自分に任せてもらえたのは嬉しかったですし、とにかく頑張ってみよう!と思いました」

子どもたちの「みてみて!」を大切にしたい。コンセプトは「運べる積み木」

▲積み木の形は、実際の保育現場での子どもたちの様子を参考に、あらゆる素材や形を試作していった

オリジナル玩具の企画は、実際に子どもたちが遊ぶ様子をプロダクトデザイナーとじっくり観察するところから始まりました。

どのような遊びが子どもたちに求められているのか、遊びを通じてどんな学びを提供できるのか、そしてどんな玩具があれば保育の質が上がるのか……。保育現場の声を聞き、考え、話し合う。形態や素材のアイデアを出し合い、試作品を子どもたちに実際に使ってもらいながら、細かな改善や変更を加えていく。

デザイナーと二人三脚で、地道なステップを重ねながら少しずつ形にしていきました。

守隨 「注目したのは、子どもは『みてみて!』が大好きだということ。子どもたちは自分がつくったものを、家族や保育園のスタッフに『みてみて!』と、大喜びで見せに来ます。でも、積み木は動かせないので、その場に人を呼んでこなくてはいけません。そこで生まれたのが、『運べる積み木』というコンセプトなんです」

こうして、積み木と組み立てブロック玩具の要素を融合して誕生したのが、「つ*く*ろっく」です。大きさは3種類で、それぞれ楕円形の穴が1つ、2つ、3つと開いています。穴に差し込むだけでピッタリはまり、いろいろな形に組み立てることも、組み立てたものを持ち運ぶこともできるのです。

もちろん、積み木のように並べたり、積み上げたりすることも可能。シンプルですが多彩な遊び方ができ、子どもの成長段階に応じて、触るたびにさまざまな発見があります。

守隨 「子どもたちを観察していると、こちらの意図とは違う使い方をしていて、逆に私たちが『つ*く*ろっく』の可能性の大きさに気づかされたこともあります。
嬉しかったのは、保育園の先生方から『長く遊んでいましたよ』という声をたくさんいただいたこと。『シンプルだから飽きるかもしれない』と思っていましたが、子どもたちは遊びながら自分でどんどん新しい楽しみを見つけていくんですね」

遊び、片づけるにとどまらない。「物を大切にする心」や「愛着心」も育む

▲工芸品のような木製玩具「つ*く*ろっく」は、オリジナル知育ブランド「あそ*し*あそ」(「あそび」のなかに「しる」がある、の意)の第一弾として発売

「つ*く*ろっく」の製品化でとくにこだわったのは、その素材。当初は樹脂製の試作品もつくりましたが、手ざわりや安全性・耐久性なども考慮し、木製にたどり着きました。

守隨 「いろいろな木材で試作して、最終的には静岡県産の天竜ヒノキに決めました。無塗装の天然木は軽くて手触りが良く、抗菌作用があり、森の中にいるようなやさしい香りがします。
静岡の職人さんにより、一つひとつ丁寧につくられた工芸品のような仕上がりで、使い続けるうちに深みが増していくのも魅力。大人になってもオブジェとして思い出を残せる、まさに成長アルバムのような玩具です」

「つ*く*ろっく」には本体以外にも、使い方を解説した「スタートブック」、「ヒントカード」、収納用の「おかたづけ袋」や「お手入れ用 紙やすり」が入っています。

守隨 「紙やすりを付けたのは、このプロジェクトに私を指名してくれた上司のアイデアなんです。上司は、スターチャイルドのコンセプトから開発まで手がけた人。入社面接時に面接官として初めてお会いした際に、『この人と一緒に働きたい』と思い入社を決めた、憧れの人でもあります。
紙やすりを 1枚付けることで『物を大切にする気持ちを育んでほしい』という私たちの願いが、より伝わりやすくなったと思っています。大人になっても部屋のオブジェとして飾るなどして、思い出が詰まったアルバムのように『一生一緒にいられるおもちゃ』になってくれるといいですね」

2019年11月に完成した「つくろっく」は今後、スターチャイルドが運営する保育施設に導入されるほか、ウェブサイトでの一般向け販売もスタートします。会社としても自身としても初体験のプロジェクトがひと段落ついた今、守隨の胸にはどんな想いが去来しているのでしょうか。

守隨 「ゼロからイチを生み出す経験をさせていただいたことは、私自身にとっても大いにプラスになりました。どうしても目の前の仕事に追われがちなのですが、仕事の中にクリエイティブな要素が入ることで、自分自身の視野が広がり、プライベートも含めて生活自体が豊かになるということをあらためて感じた時間でした。
私自身が感じた『生み出すことの楽しさ』を、これから周囲の人たちにも伝えていけたらいいなと思っています」

*オリジナル知育ブランド「あそ*し*あそ」ウェブサイトはこちら:https://www.aso-shi-aso.com