映画監督を本気で目指していた学生時代

▲学生時代の篠原健(右)

僕の経歴はちょっと変わっているんです。今はCDOというデザインの最高責任者の肩書きがありますが、もともとは映画制作会社の新卒社員からスタートしました。

映画製作会社を志したきっかけは、学生時代の友人と映画を自主制作していた経験でした。毎晩深夜まで作業をして、ちょっと寝て起きて、また作業して……。それがもう楽しくて楽しくて仕方がなかったんです。

そんな生活をしているうちに、プロの世界を本気で目指すようになっていました。いろいろな映画制作会社に「なんでもいいから仕事をさせてくれ」と電話し、アルバイトからスタートし、そこから正式に雇ってもらうことが決まって新卒入社。映画監督を目指し、日々駆け抜けました。

映画会社の社員としてのメイン業務はプロデューサーのアシスタント。撮影現場において必要なことはすべて自分の仕事だと思い、撮影現場の準備から撮影の中の手伝いやデザイン補助などありとあらゆる仕事をしていましたね。

そしてその6~7年後には、音楽映像制作会社に転職してMV制作をしたり、博報堂アイ・スタジオに転職して映像ディレクターからアートディレクターをしたりしていました。

クリエイティブに困っている会社をなんとか救いたいと思った

キュービックと出会ったのは、今から約2年前の2018年ごろのことです。前職のつながりで、とある社員と会ったことがきっかけでした。当時キュービックはクリエイティブにとても困っていて、いろいろ相談を受けていたんです。

「デザイン経営を実現するには」
「デザイナーが活躍できる組織構築の仕方」
「デザイナーのキャリアパスをどう描き、育成するか」

など、多くの悩みを聞く中で、さまざまな問題点が見受けられました。

でも、キュービック独自のマーケティングフレームが、デザイン思考のフレームと同じものだったことから「この会社はデザインの会社だな」と感じていたんです。デジタルマーケティングの会社だけれど、「ユーザーの体験をデザインする」ということを本質的に捉えられている会社だなと。当時、これを社員に伝えてもまったくピンときていませんでしたが、それくらい無意識的に、普段から当たり前にユーザーのことを徹底的に考え、設計する。そういう考え方が根付いている会社でした。

初めは、代表の世一 英仁や社員の方々から相談を受けるのみだったのですが、その社風に強く共感し、一緒にこの課題をクリアしたいと思うようになりました。そして、最終的には入社を決意したんです。昨年(2019年)の3月のことでした。

また、個人的に持っていた課題感もありました。僕はもちろん思っておりませんが、世の中的には「デザイナーは地位が低い」と言われているんです。なかなか育成に力を入れてもらえず、成長が難しい現状がありました。

でも、デザイナーの育成が活性化することで、いいものをたくさん世の中に届けられるようになることはまちがいありません。キュービックに入社して、CDOとなった今は、そういった世の空気をなくしたいと思っています。また、デザイナーの地位を向上して、よりユーザーのニーズに合ったものをつくり出していくために、デザイナーの育成をちゃんとしたいという想いが強くあります。

「三谷幸喜監督とCEO世一は現場のつくり方がすごく似ている」

転職をしてきた中で、もちろん自分がやりたいことが実現できるという点は大前提として、最終的な入社の決め手はいつも「ヒト」でした。これは映画制作会社で働いていたときの経験が関係しています。

三谷幸喜さんが監督をされた「ラヂオの時間」という映画の現場を経験させてもらったことがあるのですが、そのときに「三谷さんは本当に現場のつくり方がすごく上手だ」と感じたんですよね。

現場にいるキャストはもちろん、スタッフ全員に気を配っていらっしゃって……。僕みたいな末端な立場の人間にもまったく同じ目線で接してくださり、すごく感動したことを覚えています。

現場にいるスタッフは、自分がつくりたいと思っているものを一緒につくってくれる「ヒト」ですよね。そのヒトに対してリスペクトの気持ちを持って接することは当たり前でしょ、という発想で周りに接していらっしゃいました。

もちろんこちら側も楽しんでやっているけれど、それをもっと楽しくしようとしてくださる。だからずっと現場が楽しかった。

僕の仕事のモットーは「大変だけど楽しい、が一番」。これを教えてくださったのは、まさにこの三谷さんの姿勢でした。苦しくて大変な現場をたくさん経験してきたからこそできるその振る舞いから、「ああ、こういう世界ってあるんだ。こうやって楽しみながら仕事するっていいな」って思ったんです。

今、世一と一緒に働いていて、あのときに感じたことを思い出しています。

社員はもちろん学生インターン一人ひとりに対してもリスペクトの姿勢があったり、大変な状況の中でも楽しさを見つけて、それを周りに伝染させていくところだったり。一緒に働くメンバーを「ヒト」として尊重し、巻き込みながら盛り上げていく姿がすごく似ているなと感じています。

僕がキュービックで楽しく働けているのは、間違いなく彼がつくり上げたこの雰囲気があるからです。

マーケとデザインを本当の意味で融合させたい

2020年1月現在は、デザイン視点での組織開発やコーポレートブランディング、事業PRの強化、また昨年7月にリリースした参加型SNSアニメ「モモウメ」の事業展開などさまざまなことを進めています。

とくに「モモウメ」は若者を中心に話題になっており、ここでどうにか軌道に乗せていきたいですね。ゆくゆくは国民的キャラクターになってくれればと思っています。

また、2020年にはキュービック初となるデザイナーの新卒社員3名の入社が決まっているので、デザイナーの育成もこれまで以上に頑張らないといけないなと感じています。

キュービックはデジタルマーケティングの会社ですが、マーケティング力とデザイン力をさらに強化して本当の意味で融合させ、勝てる会社をつくっていかないといけません。そのためには、今後デザイナーが、ビジネス部門メンバーと同じ知識と目線で事業がつくれるようにしていくことが必要となります。

僕が思うマーケティングとデザインの真の融合、それはデザイナーがマーケ知識、マーケッターがデザイン知識ではなく、お互いがボーダレスに知識や仕事を共有することです。これが達成されたとき、キュービックはマーケティングの会社でありながら、「デザイン」をも武器にできる会社になると思います。これはCDOの僕が描く、キュービックの未来でもあります。今は、その未来に向けて全力で走り続けるのみ。僕らの足が止まることはありません。