私より熱い人がいる。 「誰のため?」を突き詰める職場

私が転職した2000年代は、クライアント・サーバ型システムからWebシステムへ移行する過渡期でした。前職のシステム会社で携わったシステムはクライアント・サーバ型。病院情報システムを担当した際は、全端末にインストールしていくのに苦労した記憶があります。

ドリーム・アーツは私にとって、2社目の企業になります。2007年に入社して最初に配属されたのは、現在開発責任者を務める「SmartDB」開発チーム。サポート、ドキュメント、導入プロジェクトなどの部署を経て、再び「SmartDB」チームへ戻ってきました。

入社当時印象的だったのは、日本人が全然いなかったことです。「SmartDB」チームもドイツ、ベトナム、中国、インドと国際色豊かで。日本人は私の他にふたりくらいでした。

最初の印象は「ついていけない」です(笑)。 ドリーム・アーツの技術は、入社当時の私にはレベルが高く感じて──。そんな中でもやってこれたのは、チームで働くことに楽しさを感じていたからだと思います。

前職でも今でも、「みんなで乗り越える修羅場」が好きなんだと思います。仲間と力をあわせて苦難を乗り越える瞬間にやりがいを感じていました。

再就職の際、異業種含めていろいろ検討しましたが、やはりエンジニアという職種に戻ってきたことも、そしてドリーム・アーツを選んだことも、そこにつながっているのかもしれません。

ドリーム・アーツが前職と違うと感じる点は、「積極的に人を巻き込むことが奨励される風土」かと思います。

時に対立しても、より良い結果を出すために、そしてお客様のために、自分ごととして意見を言うことに価値を認める雰囲気があります。そこには開発もフロントも、部署や拠点も関係はありません。

……熱い人が多いですね。「私より熱い人がいる」と思うと、安心して自分も熱くなれます(笑)。

質実剛健な委員長、「SmartDB」が教えてくれたこと

▲150秒でわかる、大企業向け業務デジタル化クラウド「SmartDB」

私が開発責任者を務める、大企業向け業務デジタル化クラウド 「SmartDB」は、大企業のフロントオフィスのお客様の業務を助け、スピードを速くするシステムです。

決して派手なシステムではありません。クラスにいる子にたとえるとしたら「質実剛健な委員長タイプ」という感じでしょうか。

「縁の下の力持ち」的な役割を持つプロダクトですが、地道に実績を積み上げてきました。

たとえ気づかれないとしても、大企業の皆さんを支えるインフラとして使われているのは、開発者としても励みになります。

たとえば三菱UFJ銀行様の文書管理システムとして10万人が使っているとか、コクヨ様で10年以上使われているとか、立命館大学様の5万人の業務基盤になっているとか……。

大規模組織で多くのユーザーに使われているというのは誇らしく、同時にプロダクト提供の責任の大きさも感じます。

そんな「SmartDB」を開発する中で大切にしているのは、「バランス感覚」です。

業種・部署に関わりなく、多様な目的で使っていただくプロダクトだからこそ、「汎用性」が大事。かといって、際限なく機能の「幅」を広げすぎてしまうと、実業務で活用されるには「深さ」が足りないという事態に陥りかねません。あれもこれも、と機能を盛り込みすぎてしまい、結局使われないという失敗も経験しました。

このバランスを実現するため「どんな目的を達成するために、どういうシーンでその機能が必要なのか」というインプットが重要です。そのためお客様と直接お会いできる場や、ユーザー会など生の声を聞ける機会には積極的に参加し、そこで得られた貴重な意見や活用方法を大切に蓄積しています。

自分の想像を超えて活用されているのを聞くのは、とてもおもしろいですね。製品のコアなファンが使い方を工夫しているのを見ると、思わず唸ってしまいます。「こんな使い方があるの!?」と驚くことも(笑)。

ですから「SmartDB」は不思議と、私たち開発チームだけでつくっているという感じはしないんです。

私たち開発者にも想像がつかなかったようなユニークな使い方を知って、組み込んで、それが他のお客様の役に立っていく。まるで「素直な新人」をみんなで育てているような、妙な愛着がありますね。

製品の成長を加速させる「良質な修羅場」と「対話」

▲現在は36名のチームをリーダーとしてまとめる(写真は中国・大連の開発拠点にて。鳥羽は中央)

今でこそドリーム・アーツで、大企業向けポータル・グループウェアの「INSUITE」と並び主力製品になっている「SmartDB」ですが、何度か転機を経験しています。

「SmartDB」は、もともとエンタープライズを想定して立ち上げたプロダクトではありませんでした。そのため、処理速度や大量のデータへの耐久性など、大企業が使うために必要なニーズと製品の性能にギャップが出てしまったことも。2012年ごろのことです。

この問題には、半年単位のプロジェクトを何度か繰り返して対処していきました。かなり大掛かりで、骨の折れるプロジェクトだったと記憶しています。しかし、「SmartDB」が2019年現在、大規模組織での利用に耐えうる堅牢なプロダクトになったのは、この「成長痛」を経たからこそです。そのとき「製品の成長は、期待とのギャップから生まれる」ことを学んだように思います。

また、修羅場や苦難を乗り切るため、メンバーとの対話が不可欠だというのも、学んだことのひとつです。

現在リーダーという立場にいますが、「対面コミュニケーションの大切さ」を実感することが多くあります。

たとえば「SmartDB」は東京と中国・大連の2拠点で開発していますが、距離がある分中国のメンバーの評価が「成果物だけに対する表層的なもの」になりがちです。だから、そうならないように意識しています。

普段の開発業務でやり取りしているチャットでは、物理的な距離や言語の壁もあり、交わす言葉が最小限になってしまうんです。しかし、実際に顔を合わせて働くと、メンバーの中で検討を尽くした結果、最善のものをアウトプットしてくれていたんだなということがよくわかる。

なので、一年に一度は必ず大連に行くようにしています。それでも少ないなという自覚はあって……。もっと頻繁に訪問できるようにしていきたいですね。

「大企業をもっと速く」を実現する、守りと攻めの「伝統工芸」的開発

▲「SmartDB」勉強会にて、直接お客様の要望をヒアリングする鳥羽(2019年)

ドリーム・アーツのプロダクトの根底には、「現場のユーザーが業務を効率化して、本当に価値ある業務にリソースを使ってほしい」という思想があります。

そういう意味で、「SmartDB」は今もこれからも、現場の人を助けるシステムでありたいんです。

地道に積み上げてきた実績もあって、ありがたいことにこれまで「縁の下の力持ち」的システムだった「SmartDB」に光が当たり、評価していただくことも増えてきました。「人手不足」が現実味を帯びてきた時代背景も、追い風になっていると考えます。エンジニアでない現場の方が自らしくみをつくり、使い、改善することの意義が、これまで以上に理解されるようになってきたのではないでしょうか。

ドリーム・アーツは「大企業をもっと速く」というメッセージを打ち出していますが、私たちもこれまで以上にスピード感を持って要望に対応していきたいと思っています。

短期的に目指しているのは、製品を速く提供するしくみを形にすることです。

まずはお客様がすぐに構築していただけるようにし、気軽に「SmartDB」を触ってみてほしい。そうすることで、これまでよりも速くフィードバックを得られ、さらに製品の価値を実感してもらえるサイクルができると思います。

「SmartDB」の開発をひと言でたとえるなら、「伝統工芸」でしょうか。 ……といっても、なにか秘伝の技があるというわけではありません。

さまざまなお客様やフロントメンバーの手によって育てられてきた「SmartDB」は、決して開発者だけのものではありません。価値ある資産を受け継いで、品質を維持しながらも、時代に合わせて革新しながら後代へ、お客様へ受け継いでいく。それが私の義務であり、ミッションなのです。