人生に衝撃を与えてくれた、あるテレビ番組

▲現在の太田

小さいころは夢とかもなくて、「将来の夢は?」と聞かれても「サラリーマン」と答えるような子どもでした(笑)。けれど実際にサラリーマンとは何か、そこまで深く考えていたわけでもなくて。

そんなとき、よく父と見ていたビジネスドキュメンタリー番組の中で、人生を変えるくらいの衝撃を受ける内容に出会ったんです。

その番組は、水の浄化剤(汚れた水に入れると水分中に含まれる有害物質と結合・沈殿し、水をきれいにするもの)を商材に、飲み水に困っている発展途上国の人々の生活を改善しつつ、収益を上げているビジネスマンを追うという内容でした。

テレビの画面には、浄化剤を使った現地の人たちの幸せそうな笑顔が写されていたんです。僕はそれまで、ビジネスと社会貢献はまったく違う世界の話だと感じていました。「いいことをする」ということは「自己犠牲をともなうもの」だと思っていたんです。それこそ、慈善活動に限った話だと思っていました。

でもこの番組を見て、お金を稼ぎながら人々を幸せにできるのがビジネスなんだということに気づいたら、サラリーマンはなんて格好いいんだろうか、と思うようになりましたね(笑)。

自分も他人も犠牲にしないで世の中に貢献して、人々を幸せにできる、そんなすてきな仕事ができたら良いなと思うようになったんです。

このときの衝撃は、僕が大学に入った後も続きました。だからゼミを選ぶときは、世の中に貢献して、かつ人々を幸せにできるようなビジネスの実践を志す、CSR企業の社会的責任を扱うゼミに入ったんです。

ゼミでは、「企業のビジネスや、政府・NPOの公共サービスが、社会にどういう影響を与えているのか」を明らかする、一種の社会調査手法などを勉強していました。

そして、大学時代の経験は、その後の僕の興味に大きな影響を与えます。

人々の幸せに貢献するために「調査」があるということ

▲石鹸の使い方についてのヒアリング(啓発活動も含む)の風景/プロジェクトのチームメンバーとのディスカッション風景

ゼミでの社会調査の勉強とは別に、ボランティアでカンボジアへ行く機会もありました。

現地のNPO活動が、カンボジアの人々にどのような影響を与えているのかを把握するため、現地の農村に行き、インタビューをして現地の生活実態を調査したんです。生活実態を追求するために、できるだけ現地の人と同様の生活をしたり、どのような生活を送っているかを直接見せてもらったりしたんです。

たとえば農村でホームステイして、現地の家族と鶏のカギ爪や目玉が入ったスープ(おいしいです)を食べつつ、貯めた雨水や水道水でシャワーを浴びたりしましたね(食べものや水に関しては、われわれにとっても衛生的に安全なものを、お金を払って用意してもらいました)。

調査のときは牛のフンがそこら中に落ちているガタガタの道を歩きながら、NPOが支援をしている方の家を訪問してインタビューしたんです。バイクに乗せてもらって、付近のマーケットも見て回りもしました。

調査を行ってみると、現地のNPOが提供していたものと、カンボジアの人々が本当に求めていたものとの間にギャップがあることがわかりましたね。提供しようとしていたものは、すでに現地では入手可能なものだったんです。

実は衛生啓発活動の一貫で、石鹸の提供とその使い方の啓発を予定していたのですが、石鹸はマーケットに売っていて、支援対象者の家にもありました。

調査後、調査の結果を踏まえてディスカッションをして、そのギャップを埋められるように、NPO活動の軌道修正を行うという経験をしたんです。たとえば、外から帰ってきたら石鹸で手を洗うといった習慣は現地では一般的でなかったため、その習慣の啓発を心掛けるなどの工夫をしました。

それまで「調査」ということにはそこまで興味がなかったのですが、こういった活動から、社会の実態を知った上で、そのニーズに合わせて貢献するという仕事に興味を持ち始めたんですよ。

社会人になるときにインテージを選んだのも、リサーチを通して社会の実態を知り、人々(生活者)のニーズに合わせた製品・サービスの提供に貢献できるような、「人々(生活者)の幸せ」を実現できる会社だと思ったからです。

リサーチの先にあるものは何か

大学卒業後インテージに入社し、2019年現在は主にグローバルリサーチを担当しています。インタビューやアンケートなどから海外市場における消費者のニーズを把握し、クライアントであるメーカー様にレポートするという仕事です。

とくに、2年目に任されたある商材に関するアンケート調査が印象に残っています。自分自身が扱う商品にそこまで精通していなかったこともあり、お店に行って実際に見たり、ネットで調べたり、カタログを見たりして、商品知識を本当にたくさんインプットしました。

今ではその商材にとても詳しくなりましたが、実は最も気に入った商品はとても高額で、まだ憧れているだけです(笑)。このプロジェクトは、難易度が高く、しんどいときや、困難なときもありました。ミスもあり、落ち込んだときもありましたが、それでもやりきれたのは、このプロジェクトの先に人々(生活者)の幸せがあり、最終的には社会への貢献につながるはず、と信じていたからです。

僕なりの「リサーチの意義」

▲リサーチの仕事の意義を語る太田

仕事をしていく中で、「リサーチという仕事の意義」について、あらためて気づいたことがあります。

それは「クライアントに人々(生活者)が本当に望んでいることをお伝えできる」ということです。

人々(生活者)が本当に望んでいる製品・サービスの提供できるようになるまで、クライアントのマーケティング活動支援ができれば、人々(生活者)の望むものが世の中にあふれ、人々の幸せにつながるのでは、と思います。

リサーチは人々の幸せに貢献できる──このことがやりがいになって、頑張ろうと思えるんです。