ゲームとリアルを横断した『超肉祭』が生まれるまで

▲株式会社吉野家 CMO 田中 安人さん(右)、ミクシィ モンスト事業本部 マーケティング部 功刀 卓(左)

2019年10月、モンストと外食戦隊ニクレンジャーがコラボし開催された『超肉祭』。

「モンスト」アプリ内で、条件をクリアすると、実際に店舗で使える無料クーポンが99%の確率で当たるキャンペーンを実施。その他にもゲーム内で使用できるアイテムのプレゼントや吉野家、松屋、ガスト、ケンタッキーフライドチキン、モスバーガーの店舗に行くと、アプリ内アイテムと商品を引き換えられるなど、ゲームとリアルを行き来しながら、日本全土を巻き込むイベントとなりました。

このコラボイベントに欠かせない存在であった「ニクレンジャー」。その結成は2018年までさかのぼります。外食産業大手の吉野家が音頭を取り実現されたこの企画は、ほんの些細なきっかけからだったと、同社CMOである田中 安人さんは語ります。

田中 「当時、社内で“肉関連企業を5社集めてニクレンジャーを結成する”という企画を立ち上げたのですが、当然ボツを食らいまして……。ただそのままお蔵入りにするのももったいないので、Twitterに投稿をしたところ、次々と協賛企業が集まってくれたんです」

最初に手を挙げたのは、ガスト、そしてケンタッキーフライドチキン、モスバーガー、松屋が次々と参戦を表明し、ボツ案は一気に日本全国を巻き込む大型コラボ企画へと発展しました。

田中 「ニクレンジャーが結成される前は、『外食企業はライバル同士』という考え方が当然であり、コ・クリエーション(共創)という概念は微塵もありませんでした。しかし、これからの時代を生き抜くためにはお互いに協力し合うことが必要不可欠だと考えていましたから、この企画に賛同が得られたことは素直に嬉しかったですね。」

このコラボレーションのすごいところは、会社全体ではなく、現場のメンバーが中心となって企画が進んでいったところ。中には社長の反対を押し切って企画を進めたり、テレビCMにニクレンジャーが登場したのを見て初めて社長がその存在に気付いた、という会社もあったといいます。

田中 「トップダウンなどではなく、各担当者自身がこの企画を実現させることの価値をしっかりと感じていてくれるからこそ成功し、固い結束で結ばれたのだと思います」

ニクレンジャーとモンスト、双方の新たなチャレンジ

『超肉祭』実施のきっかけは、今までにない規模でコラボをしたい!という企画の熱い想いからでした。

ニクレンジャーを担当されている田中さんと功刀さんの関係が構築されていることも大きかったようで、実施にこぎつけた時には、ニクレンジャー側とモンスト側、それぞれの想いは既に固まっていました。

田中 「われわれの想いは至極単純で、それぞれの店舗が拾いきれていない新規顧客、とくに10代20代の若い層の来店を増やしたい、というものでした。もちろん、ゲームのメインユーザーであるこの層が、コラボをきっかけにして来店してくれるかどうかは未知数でしたが、試してみる価値はあると思いましたね」

外食産業をより盛り上げていくために、積極的に新しいチャレンジをしていこうとするニクレンジャーに対し、モンストが目指したのはゲームの新たな可能性の開拓。ミクシィ モンスト事業本部マーケティング部で今回のコラボ実施を担当したのが功刀です。

功刀 「私たちが最も提供したいと思っているのは、ゲームそのものではなく、そこから生まれるコミュニケーションです。これはモンストに限らず、ミクシィ全体の想いでもあります。そういう意味では、実際の店舗とコラボをすることによってどのような効果や人々の動きが起こるのか、非常に興味深いものでもあったんです」

それぞれの想いを胸に、ついに正式な企画として動き出した『超肉祭』。しかし、実施に至るまでにはさまざまな課題に直面しました。

田中 「難題だったのが、実店舗でのオペレーションの問題です。外食産業において、レジのスピードが落ちてしまうのは死活問題であり、コラボレーションによるアイテムの引き換えなどで負担が生じてしまうのは、絶対に避けなければならない問題でした。しかも、オペレーションの方法は各社さまざまですから、その要望もかなりバラバラだったと思います」

功刀も、プロジェクトが始まった当時の苦労を振り返ります。

功刀 「各社の要望をヒアリングしていると、オペレーションへの懸念は共通していました。この問題を軽減する策としてデジタルでのクーポン表示に落ち着いたものの、クーポンの表示方法ひとつを取ってみても、QRコードやバーコード、番号表示など各社のレギュレーションが異なっている状況でした。

そういった中で、モンストの企画側とニクレンジャー各社で細かくすり合わせを行いました。最終的には5社それぞれの仕様でシステムを開発し、できる限り現場での負担を減らせるように尽力しました」

外食産業×ゲームのコラボ、その効果は想像以上のものに

これまでにない規模感でのコラボキャンペーンであるがゆえに、立ちはだかる壁は多くありました。その中でも、地道にコミュニケーションを積み重ねることで着実に前進し、困難を乗り越えていきました。

田中 「このコラボレーションは功刀さんの手腕がなければ成功しなかったと思います。店頭配布での紙などの販促物を極力使わず、ゲーム内で作業が完結できるようにしてくれたおかげで、各店舗のオペレーションに負担が出ないようにしてくれましたし、何よりも個性的な5社すべてと根気強く丁寧に付き合い、うまくまとめてくれました」
功刀 「5社それぞれに思惑や希望があるとはいえ、根底にある想いは共通のものがありましたから、仕事自体は非常にスムーズに進められることができたと思います。むしろ、特定の1社とコラボレーションするよりもスムーズだったといえるかもしれません。1社とのコラボでは、どうしても考え方のズレや譲れない部分が生まれがちですからね。

そういう意味では、今回のコラボでは関係者の皆さんが全員前向きで、提案に対するレスポンスも非常に迅速。そうした協力体制があったからこそ、無事『超肉祭』を開催することができたんです」

こうしてさまざまな課題を克服し、無事開催へと至った『超肉祭』。これは、吉野家とミクシィ両者にとって、単なるコラボ企画の成功以上に価値があるものでした。

田中 「コラボイベントを実施した各店舗で、通常来られない10~40代の男女の幅広い層が来店され、新規率を通常の倍にすることができました。お店によっては、キュレーションサイトでクーポンを配布したときよりも効果があったところもあるようです。デジタル施策でしたから、このようにはっきりと数字として残る形で実績を残せたのは良かったですね。

しかしそれ以上に、外食産業5社約6000店舗という過去最大規模のイベントを日本で初めて行えたこと。それこそが、このコラボの最大の価値だったと思います」
功刀 「ニクレンジャーに参加した各社が持つIPと、モンストが持つIPを組み合わせることができれば、間違いなく一定の効果を出せるだろうと思っていました。そんな中で、ガチャやキャラクターの追加など、ゲーム内の要素以外で、ユーザーが動くきっかけをつくれたことは非常に意味のあることだったと思います。

私たちはモンストを、単なるゲームとしてとらえていません。あくまでも、ひとつのコミュニケーションツールです。『超肉祭』をきっかけに、「モンスト」のユーザー同士が「一緒に行こうよ」と会話して店頭に足を運んでくれていたとしたら、ミクシィ全体の想いを体現化できたといえるのではないでしょうか」

『超肉祭』から見えてきた、“変化していく”ことの重要性

『超肉祭』の成功を受け、吉野家とモンスト、それぞれの今後の目標、期待してほしいことがより具体的に見えてきたとふたりは語ります。

田中 「吉野家は昨年で120周年を迎えました。これまで100年以上守ってきた、おいしい牛丼を提供していくという企業の根底にあるものは、これからの100年も決して変わることはありません。

ただ、それだけで外食産業を生き抜いていくことは難しいとも思っていますから、若者や女性、ファミリーなど、新しいお客様が来店していただけるような仕掛けは、今後もいろいろと挑戦していきたいと思います。変えるべきところは変え、変えてはいけないおいしさは守りながら、外食産業全体が良くなっていくよう、これからも努力を続けます」
功刀 「世の中が変化するスピードは凄まじく、今の成功体験が来年も同じようにあるとは思いません。たとえばわれわれのようなIT企業であれば、デバイスやネット回線など、そういった変化にも柔軟に対応していく必要があるでしょう。スマホやSNSが台頭してきたときと同じように、人と人とのコミュニケーションの形もどんどん変わっていきます。

変わっていく世の中をどのようにキャッチアップしていくか。企業としてはもちろん、個人としても、常に脳みそを最新の状態に保っていきたいですね」

日本の外食産業の一手を担う、吉野家。そして、世界累計利用者数が5,300万人を突破したモンスト(2019年12月時点)。外食とゲーム、交わることがあまりない業界同士でも、“業界全体をアップデートし、進化し続けたい”という熱い想いは同じ。今回の『超肉祭』は、参加したすべての企業がひとつの方向を向いたことで実現しました。ミクシィはこれからもコラボレーションする企業と切磋琢磨しながら、進化を続けてまいります。