グローバル化によって深刻化していったコミュニケーション課題

▲グローバル化・拡大に従い不足した“リアルなコミュニケーションの機会”を解決するGeneral Meeting

今から約10年前、サービスのグローバル化にともない拠点を増やし始めたヌーラボは、ある悩みに直面していました。それは、コミュニケーション不足によりビジョンや文化共有が難しくなってきたこと。人数は今のおよそ1/5の数十人程度なのに、どこにどんな人がいて誰が何をしているのかわからない……という状況に陥っていたのです。

日常的にオンラインでコミュニケーションをとりながら仕事を進めていましたが、互いをきちんと理解した上でコミュニケーションをとっているかと問われると、決して「Yes」とは答えられませんでした。言語が多様で時差もある環境は、適切に仕事の依頼や声かけが行われないという事案を多数発生させていたのです。

安立 「ヌーラボの場合、サービスが先にグローバル化して後からメンバーがグローバル化したせいか、メンバーがそこに追いつけていない部分がありました。たとえば、ユーザーのことがわからないという点。国が違うだけでユーザーは自分と異なる背景や文化を持っているので、課金に対する考えひとつ異なります。けれど、それがどういう考えかわからないという課題がありました」

グローバル企業であるという意識がメンバーの中で薄れていることも課題でした。国内拠点の人数増加にともない日本語を話すメンバーが増えたことにより英語の使用頻度が下がり、英語圏メンバーが疎外感を覚えるようになってしまったのです。

加えて、当時は受託事業と自社開発事業の2本柱になっており、このふたつの事業間でも相互理解ができておらず意識の差がありました。

これらの課題の原因は共通してコミュニケーション不足。ヌーラボは、Backlog、Cacoo、Typetalkという3つのサービスを、色々な拠点のメンバーが一緒になって作っている組織です。そのため、これらの課題を解決しないことには事業存続の危機は避けられないと感じました。

そして話し合った結果スタートしたのが、ヌーラボ式全社総会「General Meeting」だったのです。

一緒に作業して笑い合うからこそ見えるものがある

▲極力異なる拠点のメンバ ーが混ざり合うよう、自己紹介を兼ねたワークを実施

「General Meeting」は、半年〜1年に1度ペースで、本社がある福岡で開催している全社総会です。一度の開催は3〜5日間。約20名の有志社員による実行委員会が毎年結成され、企画・運営しています。この実行委員会自体がまず、普段仕事で絡みがないメンバーの交流機会になっているのも特徴です。

開催目的は3つあります。

1つ目が会社の戦略共有。ビジョンを共有し、互いにグローバルな視座を身につけることで、みんなで同じ方向を見据えられるようになり「離れていても仲間」という感覚が強くなります。

2つ目が社員間のコミュニケーション促進。拠点が違う者同士は、普段オンラインやテキストでのコミュニケーションがほとんど。この機会に実際に顔を合わせて話すことで、その後各拠点に戻ってからも、互いの顔や声を頭に思い浮かべながらコミュニケーションがとれるようになります。

3つ目が強烈にポジティブな思い出の共有。これはとくに力を入れています。開催期間中に同時多発的にいくつものイベントを開催し、おのおのが好きなものに参加しているのですが「一緒にこういう交流をしたよね」「こういうところを観光したよね」と共通の思い出を持つことで連帯感をつくっています。

安立 「大事なのはとにかく共同作業をすること。その思い出が後の会話のきっかけになりますから。それに、相手の人柄って業務の中だけだと見えない部分が結構多いと思うんです。一緒にイベントに参加することでプライベートの姿が垣間見えて、実は冗談を言うタイプだったとか、逆に寡黙なタイプだったとかがわかります」

“居場所も逃げ場もつくる”ことを大切に

▲社員のライブ演奏などを行うパーティーも自分たちですべてつくり上げる

「General Meeting」で開催しているイベントの内容は多岐にわたります。班に分かれて、自己紹介とヌーラボの文化を粘土で具現化するワークショップやハッカソン、社員の良い取り組みを表彰するアワード、社員企画の会社周辺ツアー、日本酒のワークショップ、社員によるライブパフォーマンスなど。

過去開催したスケボーのワークショップでは、ヌーラボでエンジニアとして働きながら、プロ登録している選手がみんなに指導。海外のメンバーも多数参加してくれて、ハイレベルなテクニックに対するリアクションからはそれぞれの人柄が垣間見えました。

イベントは必須参加と任意参加のものがあります。任意参加のものは同時に複数開催していて、各自がどれに参加するか、あるいはどれにも参加しないでフリータイムにするかを選べるようにしています。

そもそも社員がみんなで一緒に何かをするというのは、物理的に難しいこと。それもあって、各自が音楽フェスのようなものに参加するような感覚で、ある程度自分のペースを守れるように運営しているのです。

安立 「正直、人がたくさんいる場が苦手な人もいますからね。“逃げ場 ”を用意することも必要かなと。全部が必須参加で、期間中ずっと大人数で行動するとなると、参加自体が苦しくなってしまうメンバーも出てくるでしょう。みんながそれぞれのペースで参加できないと、結局本当の意味でのコミュニケーションはとれないと思うんです」

リアルにコミュニケーションをとる機会があったからこそ新たなトライが生まれたケースもあります。 たとえば、アムステルダムにいるメンバーは、もともと違うミッションを掲げていましたが、実際に話をする機会を持ったときに、「既存プロダクトのフロントエンドをマイグレーションするプロジェクトを手伝いたい」という意思があることがわかりました。そこから、彼女には新しいプロジェクトにも関わってもらうようになりました。

もちろんコミュニケーションには、単純に「仲が深まる」という効果もあります。例年開催後には、それまで交流のなかったメンバー同士が、オンライン上で意見を言い合ったりコメントし合ったりするという光景が見られるのは、もはやヌーラボの風物詩です。

オンラインとオフラインの最適解を探すことが、これからの働き方のヒント

▲ドローンからの全体集合写真の撮影が恒例となっている

ヌーラボは2019年現在、国内3拠点に加え海外3拠点(アメリカ・オランダ・シンガポール)、さらにリモート拠点(フランス・台湾など)があります。これだけ広がっていれば、異なるバックグラウンドを持っている人たちが集まるのは当たり前。

安立 「正直、これだけ自分と異なる文化を持つ人たちと連日対面で話すことは日ごろないので、とても気を遣いますし大変ですよ。けれど『この会を経てコミュニケーションがとりやすくなった』という声は多いので、やる価値はあると思っています」

ヌーラボは「Backlog」「Cacoo」「Typetalk」という3つのオンラインサービスを提供している会社です。オンラインの利点を知り尽くし、オンラインをフル活用しておのおのが仕事に向き合っています。だからこそ、どうやったらオンラインコミュニケーションをとりやすくなるかというのを、常に研究し続けなければならない立場だと自負しているのです。

安立 「毎年開催し続けている『 General Meeting』は、ヌーラボの文化を体現していると言えるでしょう。ヌーラボ自体がロールモデルとなり、今後は『 General Meeting』をもっと社外に発信していかなければならないと考えています」

オンラインとオフラインのバランスを取ることこそが、これからの働き方のヒントだとヌーラボは考えます。そのバランスは各社で異なるので、自社に合ったスタイルを突き詰めるためには、自社と自社で働くメンバーと正面から向き合うことが大切です。

誰かに提案するなら、まず自分から。

オンラインとオフラインの最適解を、ヌーラボは「General Meeting」を通してこれからも追求し続けます。