自らの行動で勝ち取り続けた自身のキャリア

▲DEAN & DELUCA 六本木店の担当商品棚前

フランス料理の料理人をしていた父の影響から、幼いころよりフランス料理のみならずフランスの文化全般に興味があったという吉住。高校卒業後は迷うことなくフランス料理を学ぶために調理の専門学校に通おうと決めました。日々調理の技術を磨き、充実した日々を過ごしていると、やがて就職活動の時期が近づいてきます。

学校に所狭しと貼り付けられた多くの求人票の、隅から隅まで目を通した吉住。しかし、自身の興味を引く求人には出会えませんでした。

そんなとき、自身の価値観を大切な判断基準として持っていた吉住は、学校求人の中から就職先を決めることは早々に辞め、ネットや雑誌の情報をもとに自身の琴線に触れた店舗へ直接出向き、働きたいと思った店舗に直談判することに決めます。

そうして横浜にあるフランス家庭料理店と出会い、そこの香り高く美しい料理に心を奪われ、食事をしたその直後に「この店で働かせてください」と伝えました。

人気店であったために、すでに見習いの料理人が居たこともあってそのときは断られますが、その熱意を買われ、後日その店より採用の連絡がきます。

こうして吉住の直談判は初めての成功を収め、料理人としての人生がスタートしました。

自身が希望した店舗で料理人としてのキャリアをスタートした吉住。ですが、約2年間で料理人の道を諦めることになります。

吉住 「手荒れがひどかったのが一番の理由ですが、同時にシェフの料理への愛情を間近で見ていて、この人以上の料理人にはなれないと思ったのも理由のひとつです」

次に熱中できるものを探す中で、カフェのホールサービス業務にチャレンジすることを決めます。

吉住 「そもそもコミュニケーションが苦手でキッチン業務が向いていると感じていましたが、お客様の意図を汲み取ることができるようになりたいって思うようになったんです。苦手を克服するためのチャレンジでしたね」

そうして学生時代同様に自身の足を使って職場探しをする中、表参道で理想の店舗に出会います。

「バリスタ」という職業との出会い

▲ブルックリン視察出張

理想の店舗に出会った吉住は、その場で人生2度目の初来店で直談判を行い、2度目の成功を勝ち取ります。

自身の希望店舗で新たなチャレンジとして始めたホールサービスは学びの連続で、好奇心旺盛な吉住は店舗内を歩き回ることだけでも楽しかったという。

その後に先輩メンバーからの誘いを受け、バリスタという職業と出会うこととなります。そもそもコーヒーが飲めなかった吉住ですが、バリスタ業務へのめり込むのに時間はかかりませんでした。

吉住 「同じマシン、豆、ミルクを使っているのに、つくり手によってこんなに味が変わるということに感動したんですよね。極めたいと思い始めてからは、店の閉店後から朝まで店に残って良く練習していました。成長を実感できるとさらに楽しくなって。気がつけば同僚たちからは『練習の鬼』と呼ばれていました(笑)」

その後バリスタとしてのさらなる成長を目指し、他社でのバリスタ業務を経験した後にコーヒー業界の知人の紹介でDEAN & DELUCAと出会います。

吉住 「知人から『吉住さんに合った、コーヒーのクオリティにこだわりを持ってるおもしろい会社がある』と紹介されたのが DEAN & DELUCAでした。
DEAN & DELUCAのミッションに『お客様一人ひとりに食の見るたのしみ、つくるたのしみ、食するよろこびを提供し続けます』というものがあって、その考え方に深く共感したんです。だから、今不安に思っていることも、また経験になると思って自身で決断しました」

そんな中でも自主練習を欠かさなかった吉住が、その後あることで一気に社内に知られることとなります。

吉住 「アルバイトで入社して間もないタイミングで社内のバリスタ認定会があったのですが、そこに参加してみたら 100点満点で優勝したんです。その認定会では多くのバリスタが真剣にバリスタ業務に取り組んでいるのを知っていたので、嬉しかったですね。 DEAN & DELUCAは従業員が職人(= artisan)であることを大切にしているブランドだとは知ってはいたのですが、本当にそうなんだなって」

DEAN & DELUCAでの仕事にやりがいを見いだし始めた吉住は、バリスタとしての高い技術や成長のために自ら学ぶ姿勢が評価され、ドリンクメニュー商品の開発担当ポジションに就くことに。

吉住 「商品開発の仕事はプレッシャーも大きいですが、私がこの会社にいる意味を強く感じることのできる仕事でした。自分が開発した商品がポスターになって、それが大ヒットしたときは本当に嬉しかったです」

そんな中で吉住は、2016年にバリスタであれば誰でも憧れる大舞台で大きな結果を残します。

やりきったその先に見えてきた新たな目指す道

▲2016年ワールドラテアートチャンピオンシップの表彰台

『ジャパンラテアートチャンピオンシップ2016』優勝。

その結果を受け出場した『ワールドラテアートチャンピオンシップ2016』にて第3位にも輝き、押しも押されぬ日本を代表する女性バリスタとして、吉住は大きな評価を得たのです。

吉住 「ワールドラテアートチャンピオンシップの 3位は悔しさもあったけど、そのときはやりきった感の方が大きかったですね。そもそも最初から、大会への出場は今回で最後にしようと決めていましたし。でも、大会から日本に帰ってきて急に不安になったんです。虚無感を覚えたといいますか」

今までひたすらにバリスタに向き合ってきた吉住だからこそ抱いた、目標がなくなったことによる“虚無感“とやりきったことによる“無気力感”。

吉住 「バリスタ業務は 10年くらい本気で向き合ってきたから、何か違うやりたいことを探そうって思って。いろいろ考えて行き着いたのが、バイヤーという仕事だったんです。コーヒーという一つ世界に向き合っていたのでその反動もあって、もっと広い目線で食と関わりたいって思ったんですよね」

想いを行動に移す吉住。当然今回も直談判をします。

吉住 「今回はそのポジションを任せてもらえるのに 2年かかりました(笑)。バイイングに関してはまったくの素人だったので、最終的に熱意を買ってくれた感じだと思います。そのときの上司も裏でフォローをしてくれていたのだと後から聞いて、とても感謝しました」

吉住の熱意が当時の上司をも動かし、結果的に3回目の直談判も成功したのです。

商品の企画から販売までを取り仕切るMD(マーチャンダイザー)に就任することになった吉住。担当をすることになったのは地中海食材、ジャム、ハチミツでした。

吉住 「本当は和食材を担当したかったんです。つくり手さんが国内にいるのでつながりやすいし、直接現場にいける機会が多いだろうなって。現場に行って話を聞くのも、楽しそうじゃないですか」

そんな吉住の気持ちも、担当する商品の背景を深く理解すればするほど変化が訪れます。

吉住 「バイヤーになるまで知らなかったんですけど、私たちが取り扱っている食材のほとんどは生産者さんとダイレクトにつながっているんです。だから商品に関する情報をたくさん得ることができて。そうすると店舗に並んでいる商品すべてが『つくり手さんの人生の集大成なんだ!』『もっとこの商品をお客様に届けたい、この商品の良さを知ってもらいたい』って思うようになりました」

今までは自分がつくった商品でお客様を喜ばせることにやりがいを感じていた吉住でしたが、誰かがつくったモノから想いを受け取り、それをお客様に届けることにやりがいがシフトしていきます。

尽きない想いを原動力に続けるチャレンジ

▲木頭柚子の果樹園 徳島県 黄金の村

誰かがつくったモノから想いを受け取り、それをお客様に届けることにやりがいを感じ始めた吉住が、つくり手さんとさらに深くつながりたくなったのは自然の流れだったのかもしれません。

吉住 「外に出てもっとつくり手さんと直接つながりたいという話を上司にしたら、『だったら自分でそういう機会をつくってみたら』と言われたんです。だから自分なりに考えて果樹園めぐりを企画、提案しました」

そうして2019年8月より、吉住が企画、提案をした新たなプロジェクトがスタートしました。

それは『その場所でそのときにしか食べられない最高に旬なフルーツを使用したジャムの開発』です。吉住はジャムの担当であったため、自身がつくり手さんと直接つながる企画を提案したのです。

吉住 「最高に旬なタイミングというのは農家さんに聞かないとわかりません。このプロジェクトを実現するためには農家さんとの密なコミュニケーションは欠かせないし、そのためには現地に行かないと。
旬な時期に現地へ足を運び、実際に食べて、話をして、想いを受け取った上で商品開発をしています。数は限定なので、大きな結果を与えられないのはわかっています。でも将来は、自分が関わった果樹園をいろいろな意味で豊かにすることができたら嬉しいです」

興味を持ったことにはちゅうちょせずに飛び込み、熱中する。やりたいことは声に出し、自身の行動で勝ち取る。仕事を通して得た気づきで成長をし、関わる人が豊かになることで自身も豊かになる。

吉住の次の好奇心がどこに向くのかは誰にもわかりませんが、自身の成長を通して社会に対して大きな価値を提供し続けられるメンバーであり続けるでしょう。